コハリトりみっと
長編恋愛FT「タトゥー・オブ・ギャラン」がメインの小説・雑記サイト。
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「お名前は?」「舛幸太(ますこうた)」「……はいはい、幸せな、太さ、ね」 舛君はちょっと赤面したようだった。今思えば、彼は早熟だったのかもしれない。いや、実際のところ彼は早熟だった、というより文字通り彼は成長が早かった。 小学三年になる頃には、彼の体つきは高校生と並んでも遜色の無いものだったし、いつのまにか声も変わって、ピアニカを弾くその手もむしろ父さんみたいにごつい、男の人の手だった。 彼はとて...
「レギュラー、10リッター、現金で!」 グレーの地味なセダンだが設えはいい。すう、と滑るように給油口を寄せると、彼女は窓を開け、控えめだが快活な声でそうキッパリと言う。 前に出していたシートを後ろに引くと、わずかに身を倒して給油口のレバーを引く。そして、ふっ、と息を抜く。交通量の多い国道からうちのスタンドに車を滑り込ませて初めて小さく息を吐く、そのどこか一瞬気の抜けた表情が好きだ。 今日もミニスカ...
俺のが呪いのソレだとして、彼女のは祝福された品、つまりはホーリーアイテムってワケだ。願いの叶うブラジャー、それを彼女は持っている。 セックスするときは避妊がマナー、それが大人の常識だったはずなのに、今やゴムをつければ非国民扱いされてしまう。時代というのはこうも大きく転回するものかと、それを目の当たりにして俺はさまざまな苦汁を……それこそ山のような自己批判文を書き、当局にどうにかこうにか命乞いをした...
悪化する一方の地球環境と緊迫した世界情勢、いつ牙を剥くかいつ勃発するか知れぬ天変地異や全面世界戦争に備え、防災の日には国民は自宅にて心の準備をすること、と国が定めて既に数年が経つ。当然ながら会社は休みだし、コンビニも休みだ。 非常用持ち出し袋の中身のチェックをしている彼女のその横で、床にぐうたらと寝そべっていた俺は見慣れぬ缶をひとつ手にとった。「なにこれ……子宝缶?」「うん、今年初めて配られたのよ...
ちょっとした都市伝説である。 昨今のラブホテルのそれには、稀にアレが紛れ込んでいるらしい。 呪いの、ゴム製品。 聞けば秦の始皇帝の時代からそれは存在し、ひとたび装着すれば二度と外れないという、まさに呪いのアイテムだそうである。 その名を、「強力(チュアン・リー)」。 付き合って一年もすれば気が緩むとでも言うのか、いつもは携帯しているはずのそれを、忘れた。ホテルにしけこんでいざというときにそれに気...
「星の特質は願望を吸うことである、そこで開発したのがこの”願望吸着シート”だ、星の総数3,190、直径1.1ミリ、上下左右間隔0.9ミリ。白地に銀星、中央に”7”を金星で抜く、コレがもっとも効率よく願望を吸着する!」 かつて開発者Aは鼻息荒く滔々と一演説ぶった。 手にとればかさりと清かな音を立てる。その瞬間誰もが軽く目を細める。何とはなしに沈積した日頃のささやかな想いが紫煙となり心を充たす。 星に願いを。ロング...
「あなた、うちの主人とどういう関係なんですか!」 度重なる無言電話の挙句に、そんな女の声が受話器の向こうから聞こえてきた。 だれだ?と思いつつ、思い当たる節もあって、内心ちっ、と舌打ちする。 窓際のカーテンレールに、クリーニング屋の針金ハンガーに通した男の背広が掛かっている。仕立ての良いスーツだが、針金ハンガーに掛けられ広い肩幅の両肩がそれぞれひとつ分、落ちている。 それを見て、無様だな、と思った...



