コハリトりみっと
長編恋愛FT「タトゥー・オブ・ギャラン」がメインの小説・雑記サイト。
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「トラポ石で飛ぶと、人はどうなる?」
「ロスト」
短く、周子は応えた。
たっぷり沈黙して、ガッツリ落ち込んだ表情をして、それからギャランは首を振った。
「前王陛下は多分、そのトラポ石で飛んだのだろう、所詮素人目には区別つかんだろうからな」
うむ、とギャランは勝手に納得したのか、自分で自分の言葉に頷いて。
「そもそも、死人のところへは、テレポ石でも行けぬだろう?」
「はは。もちろん」
周子は困ったように笑った。
「死ななきゃ、行けないね」
「だな」
その王には、想った女がいて。
と、ギャランは遠い目で宙を見た。
―――それは、カズマの母親だ、と、呟いた。
「ええ?あんの冷淡メガネ野郎にも母親がいたの?」
「はは、いたさ。とうの昔に他界してるがな」
わざとそうした周子の軽口にギャランは何処か救われたようにくすりと笑った。
なにやらとても優雅な微笑だった。まっとうな、貴公子の微笑みとやらを垣間見たと思った。そしてそれがものすごく良く似合うのが、ぞっとするような違和感を周子に与えた。
「でも、聞くけど、前王陛下とやらは魔石を使えるわけ?」
「え?」
「召喚の種でもない限り、テレポ石みたいな魔石は使えないわよ?それこそ、ただ単に光ったりとか簡単な幻覚を見たりとか、誰でも弄れるようなそんな単純な魔石じゃあないもの。物理的に質量を移動させるのよ?魔石としては上等の石よ?あんたの言うこと、なんか間違ってる気がする、なんかあんたの話、前王陛下の絡むこのあたり、全然すっきりしないというか、なんかあんたらしくない物言い」
そう言うとギャランは、そうかもしれんな、と大人しくうなずいた。
「一年前、前王陛下は召喚の書を持って忽然と王宮から姿を消した、おれと違ってそうそう軽々しくは動けぬ国王だ、魔石でも使わぬ限り、この王宮からはそうそうは出られぬとおれは思っているのだがな」
「大体、前王陛下は、あなたのお父さんでしょう?」
ギャランは一瞬、意外そうな表情をする。なんとなく、今しがた思い出したかのように。
「ああ、そういやそうだな」
そんなギャランに周子はやはり違和感を感じる。緑癒石の効果で魔力が充実しているために余計に感覚が鋭敏になっているのかもしれない。
「ギャラン、あんた……」
「え?」
おもむろに周子に背中を抱きしめられ、うなじに息を吹きかけられ、ギャランは、びくり!とする。
「あなた、呪が、かかってる」
「しゅっ?」
周子の指先が執拗にギャランのうなじから首筋を撫でる。まるでそこに違和感を感じるとでもいうかのように。
だが、ギャランが感じるのはもちろん違和感などではなく。ぞくりとするその感覚に軽く身を竦める。
「―――ッ、周子?」
「あれぇ、なんだこれ。多重に……」
周子はまるで魔石の鑑定でもするかのようにうむむと唸って今度は鎖骨のあたりに息を吹きかける。
「一つは、抜けないドランクドラゴンの盟約石、この呪い、コレは私が。でも他にもかかってるな、どういうことかしらね?」
周子は唇が触れるほど寄せて、わずかな気の滞りを見極める。
ギャランはまたびくびくっとして。
すぐ眼下に周子のつややかな黒髪が。ほのかな甘い女の匂いが。肌に微かにかかる呼吸が。ギャランが悟るのはもちろん気の滞りなどではなく。
「あ。……おい、ちょっと、おい、まて、待ってって」
「黙って」
キッパリと言うと、周子はギャランの両肩をしっかり押さえつけて。
思いのほかきつく食い込んだ周子の爪先がなんだか嬉しくて。おれはつくづくバカだと思いつつ、ギャランはそのちくりとする痛みを楽しんでしまった。
周子は今度はその首筋に、それから耳元に、二の腕に、腕の内側に、指の爪先に、息を吹きかける。
「……ギャラン?」
「な、なんだ?」
「?なんて顔してるの」
「なんて、って……」
―――そら、かなりアレな気になるからじゃあねぇか
くすぶるような熱気が肚にうずくのを感じてギャランは喘いだ。
周子が有無を言わさぬ確かな手つきでシャツのボタンを外していく。するするとシャツの胸をはだけさせ、吟味するように胸板を軽く満遍なく撫でると、その胸の真中にまた息を吹きかけた。
「……っ」
「横になって」
きっぱりと周子は命じた。
そして周子は腹のあたりにもまた一つ息を吹きかけ、ベルトのバックルに手をかけた。
「おおおおおい、どういうつもりだ」
「呪を解くのよ」
「だだだだだからなんだそれは」
「自分で脱いで?足が長くて、引っ張るのも大変」
「んあああ?ああ、うん」
おれなにやってんだよ、と思いつつ、ギャランは素直にズボンを脱いでパンツ一丁になってみた。
「……力、抜いて?」
ベッドに腰掛けると、とん、と毅然とした確かな力で胸板を押される。ギャランを押し倒すと、周子が身体に乗りかかってくる。
動揺しながらもそのアングルの良さに、体にかかる愛しい重みに、ギャランはうめいた。
周子はまるで肉食の獣が獲物を吟味するかのように、ギャランのあちこちに息を吹きかける。
「……お、おいおいおい」
「たいした呪じゃないわね、でもこんな呪なんて見たこと無いな?ああ、きっと父さんだったらすぐピンと来るんだろうけど……ねぇギャラン、あんた、自分の体がどうなってるか、知らないの?」
「し、知るか!」
股間のあたりが別な意味でどうなりつつあるのかはよく分かるが、それを言えばきっと殴られる。
「ととととにかく、おれの腰の上に無用心にそう座るな!」
「この呪は、なんなの?」
「ななななんのことだか、さっぱりだな」
「あんた呪われてんのよ」
「またソレか!」
ギャランは大きく喘いだ。
周子の体をどけるべきだがどけられない。いま体を動かせばこのまま上に乗りかかりそうだ、力づくでも。
そして、それは次の瞬間には死をもたらすだろう、そんなことこの周子が赦すはずが無いのだ。
周子は極めて冷静な表情をしている。色気のイの字も無い。男の体の上に馬乗りに跨っても平然としている。夕べのような表情なら、むしろためらわずに済むのだが。
ギャランはたまらず目を逸らした。
ミニのタイトスカートは跨れば当然あられもなく白い滑らかな太ももを露出させる。その奥に見てはイケナイ白い布までチラリ、と見えている。
馬乗りに跨る周子と自分の腹との境には頼りないなんとも可愛らしいその白い布が一枚あるだけだ。その表情は恐ろしく冷静だが、跨るその体、布越しに触れる周子の身体の中心には、ちゃんと、いっぱしのオンナの熱が有る。
「だからおまえ何してんだ、さそってんのかさそってんだろさそってんだな、よしきたまかしとけ」
「解呪も、召喚の種の営業品目のうちの一つでして。私とてまあそれなりに経験は積んでます、基本みたいなもんよ」
「こここんなこと他の男にもやってやがるのか!」
ああちくしょう、とギャランはうめいた。想像しただけで胸が焼ける。
とにかくこの目の前のオンナを独り占めしたいと思う。
タトゥーの傷ではなくもっと別のものでその心に深く刻み付けたいものがある。異様に切なくてなんだか泣きたい、これが、これもまた、この情こそがタトゥーの所為だというのだろうか。
周子の冷静な顔が、これまた憎い。魔力が充実すればタトゥーには抗えると言っていたのを思い出して。確かに周子は魔力を魔石でチャージしたばかりである。だとすれば周子が自分に揺れるのは本当にタトゥーの所為、それだけなのだろうかと思うと、ギャランは今更ながらゾッとした。
「国王にかける呪って、どういうことよ?」
「おおおおれに難しいハナシをするな、そんな厄介な話はあのカズマに持っていけばよいだろう、だだだだが、お前がセックスの相手ならおれはウェルカムだ!つーか、なに?やっぱこのままメイクラヴ……」
周子は表情一つ変えない。
むしろぞっとするほど真剣な表情でギャランを見下ろしてくる。
ギャランの気の流れを詳細に読むべく、周子は極度に集中していて、今までに見たことのないその慎重な表情は、明らかに血の違いを、持って生まれた資質の違いを存分に具現している。思わずギャランは口をつぐんだ。
「ふん、この呪主は、誰?まさか」
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「ロスト」
短く、周子は応えた。
たっぷり沈黙して、ガッツリ落ち込んだ表情をして、それからギャランは首を振った。
「前王陛下は多分、そのトラポ石で飛んだのだろう、所詮素人目には区別つかんだろうからな」
うむ、とギャランは勝手に納得したのか、自分で自分の言葉に頷いて。
「そもそも、死人のところへは、テレポ石でも行けぬだろう?」
「はは。もちろん」
周子は困ったように笑った。
「死ななきゃ、行けないね」
「だな」
その王には、想った女がいて。
と、ギャランは遠い目で宙を見た。
―――それは、カズマの母親だ、と、呟いた。
「ええ?あんの冷淡メガネ野郎にも母親がいたの?」
「はは、いたさ。とうの昔に他界してるがな」
わざとそうした周子の軽口にギャランは何処か救われたようにくすりと笑った。
なにやらとても優雅な微笑だった。まっとうな、貴公子の微笑みとやらを垣間見たと思った。そしてそれがものすごく良く似合うのが、ぞっとするような違和感を周子に与えた。
「でも、聞くけど、前王陛下とやらは魔石を使えるわけ?」
「え?」
「召喚の種でもない限り、テレポ石みたいな魔石は使えないわよ?それこそ、ただ単に光ったりとか簡単な幻覚を見たりとか、誰でも弄れるようなそんな単純な魔石じゃあないもの。物理的に質量を移動させるのよ?魔石としては上等の石よ?あんたの言うこと、なんか間違ってる気がする、なんかあんたの話、前王陛下の絡むこのあたり、全然すっきりしないというか、なんかあんたらしくない物言い」
そう言うとギャランは、そうかもしれんな、と大人しくうなずいた。
「一年前、前王陛下は召喚の書を持って忽然と王宮から姿を消した、おれと違ってそうそう軽々しくは動けぬ国王だ、魔石でも使わぬ限り、この王宮からはそうそうは出られぬとおれは思っているのだがな」
「大体、前王陛下は、あなたのお父さんでしょう?」
ギャランは一瞬、意外そうな表情をする。なんとなく、今しがた思い出したかのように。
「ああ、そういやそうだな」
そんなギャランに周子はやはり違和感を感じる。緑癒石の効果で魔力が充実しているために余計に感覚が鋭敏になっているのかもしれない。
「ギャラン、あんた……」
「え?」
おもむろに周子に背中を抱きしめられ、うなじに息を吹きかけられ、ギャランは、びくり!とする。
「あなた、呪が、かかってる」
「しゅっ?」
周子の指先が執拗にギャランのうなじから首筋を撫でる。まるでそこに違和感を感じるとでもいうかのように。
だが、ギャランが感じるのはもちろん違和感などではなく。ぞくりとするその感覚に軽く身を竦める。
「―――ッ、周子?」
「あれぇ、なんだこれ。多重に……」
周子はまるで魔石の鑑定でもするかのようにうむむと唸って今度は鎖骨のあたりに息を吹きかける。
「一つは、抜けないドランクドラゴンの盟約石、この呪い、コレは私が。でも他にもかかってるな、どういうことかしらね?」
周子は唇が触れるほど寄せて、わずかな気の滞りを見極める。
ギャランはまたびくびくっとして。
すぐ眼下に周子のつややかな黒髪が。ほのかな甘い女の匂いが。肌に微かにかかる呼吸が。ギャランが悟るのはもちろん気の滞りなどではなく。
「あ。……おい、ちょっと、おい、まて、待ってって」
「黙って」
キッパリと言うと、周子はギャランの両肩をしっかり押さえつけて。
思いのほかきつく食い込んだ周子の爪先がなんだか嬉しくて。おれはつくづくバカだと思いつつ、ギャランはそのちくりとする痛みを楽しんでしまった。
周子は今度はその首筋に、それから耳元に、二の腕に、腕の内側に、指の爪先に、息を吹きかける。
「……ギャラン?」
「な、なんだ?」
「?なんて顔してるの」
「なんて、って……」
―――そら、かなりアレな気になるからじゃあねぇか
くすぶるような熱気が肚にうずくのを感じてギャランは喘いだ。
周子が有無を言わさぬ確かな手つきでシャツのボタンを外していく。するするとシャツの胸をはだけさせ、吟味するように胸板を軽く満遍なく撫でると、その胸の真中にまた息を吹きかけた。
「……っ」
「横になって」
きっぱりと周子は命じた。
そして周子は腹のあたりにもまた一つ息を吹きかけ、ベルトのバックルに手をかけた。
「おおおおおい、どういうつもりだ」
「呪を解くのよ」
「だだだだだからなんだそれは」
「自分で脱いで?足が長くて、引っ張るのも大変」
「んあああ?ああ、うん」
おれなにやってんだよ、と思いつつ、ギャランは素直にズボンを脱いでパンツ一丁になってみた。
「……力、抜いて?」
ベッドに腰掛けると、とん、と毅然とした確かな力で胸板を押される。ギャランを押し倒すと、周子が身体に乗りかかってくる。
動揺しながらもそのアングルの良さに、体にかかる愛しい重みに、ギャランはうめいた。
周子はまるで肉食の獣が獲物を吟味するかのように、ギャランのあちこちに息を吹きかける。
「……お、おいおいおい」
「たいした呪じゃないわね、でもこんな呪なんて見たこと無いな?ああ、きっと父さんだったらすぐピンと来るんだろうけど……ねぇギャラン、あんた、自分の体がどうなってるか、知らないの?」
「し、知るか!」
股間のあたりが別な意味でどうなりつつあるのかはよく分かるが、それを言えばきっと殴られる。
「ととととにかく、おれの腰の上に無用心にそう座るな!」
「この呪は、なんなの?」
「ななななんのことだか、さっぱりだな」
「あんた呪われてんのよ」
「またソレか!」
ギャランは大きく喘いだ。
周子の体をどけるべきだがどけられない。いま体を動かせばこのまま上に乗りかかりそうだ、力づくでも。
そして、それは次の瞬間には死をもたらすだろう、そんなことこの周子が赦すはずが無いのだ。
周子は極めて冷静な表情をしている。色気のイの字も無い。男の体の上に馬乗りに跨っても平然としている。夕べのような表情なら、むしろためらわずに済むのだが。
ギャランはたまらず目を逸らした。
ミニのタイトスカートは跨れば当然あられもなく白い滑らかな太ももを露出させる。その奥に見てはイケナイ白い布までチラリ、と見えている。
馬乗りに跨る周子と自分の腹との境には頼りないなんとも可愛らしいその白い布が一枚あるだけだ。その表情は恐ろしく冷静だが、跨るその体、布越しに触れる周子の身体の中心には、ちゃんと、いっぱしのオンナの熱が有る。
「だからおまえ何してんだ、さそってんのかさそってんだろさそってんだな、よしきたまかしとけ」
「解呪も、召喚の種の営業品目のうちの一つでして。私とてまあそれなりに経験は積んでます、基本みたいなもんよ」
「こここんなこと他の男にもやってやがるのか!」
ああちくしょう、とギャランはうめいた。想像しただけで胸が焼ける。
とにかくこの目の前のオンナを独り占めしたいと思う。
タトゥーの傷ではなくもっと別のものでその心に深く刻み付けたいものがある。異様に切なくてなんだか泣きたい、これが、これもまた、この情こそがタトゥーの所為だというのだろうか。
周子の冷静な顔が、これまた憎い。魔力が充実すればタトゥーには抗えると言っていたのを思い出して。確かに周子は魔力を魔石でチャージしたばかりである。だとすれば周子が自分に揺れるのは本当にタトゥーの所為、それだけなのだろうかと思うと、ギャランは今更ながらゾッとした。
「国王にかける呪って、どういうことよ?」
「おおおおれに難しいハナシをするな、そんな厄介な話はあのカズマに持っていけばよいだろう、だだだだが、お前がセックスの相手ならおれはウェルカムだ!つーか、なに?やっぱこのままメイクラヴ……」
周子は表情一つ変えない。
むしろぞっとするほど真剣な表情でギャランを見下ろしてくる。
ギャランの気の流れを詳細に読むべく、周子は極度に集中していて、今までに見たことのないその慎重な表情は、明らかに血の違いを、持って生まれた資質の違いを存分に具現している。思わずギャランは口をつぐんだ。
「ふん、この呪主は、誰?まさか」
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- 2005-09-23 08:23
- カテゴリ : 「タトゥー・オブ・ギャラン」/長編/連載中
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