コハリトりみっと
長編恋愛FT「タトゥー・オブ・ギャラン」がメインの小説・雑記サイト。
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供された酒に一口つけるや、周子は飛び上がって喜んだ。手酌で酒をついでは、みるみるうちに周子は飲み干してしまう。
「あはは、あーこれ!これ!」
そしてあっという間に上機嫌に。
「……エンヴィ、この銘柄、よくぞ見つけたな」
杯を唇に当てたままカズマがちら、と目線だけで見上げた。
過日王と一緒に飲んだ酒である。出入りの業者がたまさかに入手した極上品だと、王に献上したい、と持ち込んできた酒だったが、さぞかし気に入ったのであろう、あの夜、この酒を飲んで後は周子はすっかり大人しく、静かに座っていたものだった。
「周子を大人しくさせる効果のあるものは、私、メモに控えることにしております、惜しむらくはこれがこの世にあと二本しかない幻の銘酒ということでございます。ええ、ちゃんとその二本は私が確保してありますが……非常に高くついてますが、勿論よろしいですよね?」
「……よい。グラハムサンドも効くのだな?」
「さようで」
エンギワルーはピクリとも表情を変えぬ。
周子はどんどん杯を空けて。
それから周子はソファにごろりと横になるとあっという間に眠りに落ちようとする。
それをカズマがゆさゆさと揺さぶって。
「周子、周子、あなたは私の話を聞くのではなかったのか?」
「いやー、もう疲れちゃってさぁ、明日でいいや」
「……嘘だろう、さっきまではものすごく執着していたのに」
話そうと心積もりをしたのに、あっさり肩透かしを食らって。
そもそも一度決めた予定をさっくり履されるのは好きではない。
「そう簡単に志を曲げるな。首を小柄に刺してまで、知ろうとした魔除けの事情ではないんですか?」
そう言いながらしつこく揺さぶるが。
「べつにー。あしたおしえてよ……」
周子が眠そうに応える。
カズマはほとほとあきれ返って。不快そうに眉をぎゅーっとしかめた。
「ではこんなところで眠らないでください」
「……」
再び周子を揺さぶるが、くだくだとしどけない反応があるばかりで。カズマはあきらめたように大きく息を吐いた。
「効きすぎだぞ、エンヴィ。……まったく、動物のようだな、不躾で……他人の懐にやすやすと入り込んでは平気なカオをしている……無防備な、ほんとに無用心な……こんな細い首、ちょっとひねればすぐに折れるだろうに」
「……若、眠っているご婦人に対して呟く言葉ではありませんよ、ソレ」
カズマは護符を外すと、周子の首の傷の極近くまで持っていった。ぱっ、と白光が瞬いて、周子の傷が癒える。
「魔除けには癒しの効力もあるとかいうが……実際このように使えるとは不思議だな」
やはり周子の魔力が強いからだろうか、と、カズマはメガネのブリッジを押し上げて首をひねった。
「エンヴィ、周子を部屋にお連れしろ」
「寝てますし、このまま毛布でもかけて差し上げればよいのでは?」
「他人の気配があって私がくつろげるものか。お前も私の気の細さは知っているだろう、しかも、よりによってこんな粗野な動物……外につまみ出せ」
「若は手厳しい」
そう言ってエンギワルーは軽く息を吐いて。
「いい練習になるのでは?」
「は?何の?」
「宗主殿が若はいつ結婚なさるのかとまたお嘆きでございました」
「そのうちする、といつも言っているだろう」
「若は他人の気配があると、眠れないのでしょう?それではやはりなかなか、結婚は難しい。彼女ならば、そこいらのオンナと違って、仮に同じ部屋で夜を過ごしても抱かれただの妊娠しただのなんだと触れ回り下手に陥れられることは無いでしょう、ちょうどいいのではないですか?一晩こうしてテストしてみたら?他人の寝息も良いものですよ。最高の眠り薬です。歩みよりも大事です」
「いや、不可!」
カズマはぶるりと肩を震わせた。
「この恥知らずの無作法者は、己の王への気を削ぐために私を喰おうと言うのですよ?であれば、財産目当てに私を押し倒すオンナの方がよほど御しやすい」
ぶるぶると何度も首を振って。
「と、いうより、エンヴィ、おまえ私をからかっているだろう」
「ええ」
仕方ないな、とエンギワルーは肩を竦めて周子をソファから抱き上げた。
そのしどけなく眠るカオをしみじみと覗き込んで。
「可愛いではないですか。活きが良くて。なにしろ非常に美人だし」
「そう!非常なんです!非、常、常識が無い!世間知らずで、無作法で、粗野で、こういったタイプは私が一番嫌いなタイプです!王の命令でなければこの屋敷からとっくに追い出しています!」
「全く、若のツッこむ所はそこですか。王宮にいるような、最初っからいろいろ出来上がっているオンナなんてつまらないですよ。私は彼女が好きですがねぇ。まぶしいというか、天然素材といいますか……どうも男も四十を過ぎると、”育てるオンナ”が欲しくなるような気が。不思議なもんだな」
はは、若はまだ若い、とエンギワルーが普段はめったに見せぬ大人の余裕たっぷりの艶めいた笑みを浮かべる。
「実は、息子のコンジョナシが母親を欲しがってましてね。さすがに先日、母親が欲しいと泣き落としで迫られたときには、こう、グッとくるものが。このところ多忙であまりかまってやれなかったので、淋しかったのでしょうか……まぁ、機会があれば誰か適当な女性と再婚でも、とは、かねてより思ってはおりましたが……」
そう言って、ちょっと首を傾げまた腕の中の周子を眺める。
「そもそもコンジョナシを泣かせた多忙の原因は周子ですし。ちょっと責任を取ってもらおうかと。若い彼女なら、コンジョナシとさぞ気が合うだろうと」
「は、母親っ?」
「ええ、私の妻に」
まるで魂でも抜けたようにカズマが呆けたカオをした。
たっぷり長い間呆けて。
ぎ、ぎ、ぎ、と擦音でも伴うかのようにギクシャクとエンギワルーの方に首を向けた。
「すまなかった、エンヴィ、多忙な職務を担わせ、まともに女と接する機会を奪ってしまっていたようだ。お、女ならばほかにもっと、美人でしとやかで気の利く、選びようがあるだろう、従者にこんな粗野な女を押し付けたとあっては私の名が廃る。すすすすぐに、手配しよう、ご、極上の、もっと優れた女を」
「…それは、ダメということですかな?」
「ダメ!ダメに決まっているだろう!もっとまともなものを選べ!」
「冗談だとでも言って欲しい顔をなさっておいでだな」
「いや、冗談だろう?」
「残念です」
「冗談だろう?」
「……まあそういうわけで」
はあ、とエンギワルーが息を一つ吐いた。
「……勿体無いな」
「冗談だと言ってくれ!」
カズマはふるふる、と頭を振った。
「ふ、不穏だな、一体全体どうしたと言うのだ、王も、お前も。まままぁ王は女好きだからいいとしてだな、お前はそう軽率ではなかろう」
しばらく沈黙して。間を溜めた後の言葉は殊のほかカズマに多大なダメージを与えた。
「……だからこそ、貴重かと」
「エンヴィ!」
では、と、エンギワルーは周子を抱き上げたまま部屋を退出しようとする。
「待て」
カズマの言葉にエンギワルーが振り返る。
「彼女を、ここへ置いていけ」
「連れて行けといったのは若ですよ?」
心外、とでも言いたげに軽く眉を上げエンギワルーが振り返る。
カズマはぐっと口の端を下げて腕組をし、はっきりと頷いた。
「物騒だ、私の目の届くところに置いておく」
「物騒?」
「周子をベッドに寝かせてお前もいっしょにそこに寝る気だろう」
「長年仕えておりまするにそのようなことを仰るとは」
エンギワルーがちら、とカズマを睨む。
「私は若のことは何でもお察し申し上げたいと常々願っておりますが、まさか若もワタクシのことを察しておいでだとは。長年仕えるべきものですな、ツーカーですな」
「だから、冗談だと言ってくれ!」
「そういえば昔、王が、果報は寝て待てというのを夜這いのことだと勘違いなさっておいででしたな、ははは、あれには笑いましたな、なかなか良い解釈です、王らしい」
口先で笑いながらも、その仏頂面を一層濃くしてエンギワルーが周子をカズマのベッドに寝かせる。勿体無い、と再び呟くその声をカズマは聞き逃さなかった。
「ソファへ置け」
ぴしゃりと声が飛び、エンギワルーは首をひねる。
「まったく、若は無粋だな。どうせ抱き上げて移動させるんです、酔った女性をより快適なベッドへ横たえる、このことのどこがおかしいのです。そもそも男は、女の体の上で寝るか、まあ下でもいいですが、さもなくば、床の上で眠るもんです。いつまでも神経の細いことを仰ってないで、そろそろホントに結婚する決心をなさい、宗主殿が泣いてましたよ」
きっぱりと言い捨ててエンギワルーが深く一礼し退出する。
一体ナニがドコまで本気なのかさっぱり分からない。
はっきりしているのは結局この周子をベッドの上に残してしまったということだけで。
ババヌキのババをさんざんまわした挙句に結局自分が引き当ててしまったかのような気分である。
まるで狐につままれたように、ぽかん、とカズマはしどけなく眠る周子と二人、部屋に取り残されてカズマはひとしきり唸った。
「一体なんだというのだ……エンギワルーまでまるで悪乗りして。全く、物騒な。縁起でもない。不穏で、本当に頭にくる…ああ、なんて気持ちよさそうに眠っているのだ、全く……水差しの水でもかけてやりたいな」
カズマは周子の寝顔を見ながらぶつぶつと文句を言った。
残った酒を一人で空けて。
カズマはシャワーを浴びて戻ってきたが、やはり周子は自分のベッドでくうくうと小気味良い寝息を立てて眠っている。時折大の字になったり、身を捩ったり、なかなか奔放な寝ザマで、髪をさやさやと拭きながら、カズマはそれを眺める。
今日は疲れたな、他人のこうぐっすりと眠る様というのは案外眠気を誘うものだな、と思ったときには既にうとうとと意識を手離している。
それからとっぷり夜が更けて。
ドア一枚はさんで全く静かなその向こうの気配を察して。
そっとエンギワルーが戻ってみたときには、カズマはベッドの端にちょこんと腰掛けたまま船をこいでいる。
触れたその肩は存分に冷えている。
「若、若、そんな格好で。半裸でいては風邪を引きます、寝るのならちゃんとベッドに横になりなさい」
「……ん」
カズマは促されるがままにベッドに身を横たえ、エンギワルーがその体に毛布をかける。
「……まだまだ子供だな」
人が二人眠るのに全く支障の無い広さのベッドである。まるで兄妹のように平和な寝顔が並んでいる。エンギワルーは空いた酒器を盆に載せ、従者然として退室した。
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「あはは、あーこれ!これ!」
そしてあっという間に上機嫌に。
「……エンヴィ、この銘柄、よくぞ見つけたな」
杯を唇に当てたままカズマがちら、と目線だけで見上げた。
過日王と一緒に飲んだ酒である。出入りの業者がたまさかに入手した極上品だと、王に献上したい、と持ち込んできた酒だったが、さぞかし気に入ったのであろう、あの夜、この酒を飲んで後は周子はすっかり大人しく、静かに座っていたものだった。
「周子を大人しくさせる効果のあるものは、私、メモに控えることにしております、惜しむらくはこれがこの世にあと二本しかない幻の銘酒ということでございます。ええ、ちゃんとその二本は私が確保してありますが……非常に高くついてますが、勿論よろしいですよね?」
「……よい。グラハムサンドも効くのだな?」
「さようで」
エンギワルーはピクリとも表情を変えぬ。
周子はどんどん杯を空けて。
それから周子はソファにごろりと横になるとあっという間に眠りに落ちようとする。
それをカズマがゆさゆさと揺さぶって。
「周子、周子、あなたは私の話を聞くのではなかったのか?」
「いやー、もう疲れちゃってさぁ、明日でいいや」
「……嘘だろう、さっきまではものすごく執着していたのに」
話そうと心積もりをしたのに、あっさり肩透かしを食らって。
そもそも一度決めた予定をさっくり履されるのは好きではない。
「そう簡単に志を曲げるな。首を小柄に刺してまで、知ろうとした魔除けの事情ではないんですか?」
そう言いながらしつこく揺さぶるが。
「べつにー。あしたおしえてよ……」
周子が眠そうに応える。
カズマはほとほとあきれ返って。不快そうに眉をぎゅーっとしかめた。
「ではこんなところで眠らないでください」
「……」
再び周子を揺さぶるが、くだくだとしどけない反応があるばかりで。カズマはあきらめたように大きく息を吐いた。
「効きすぎだぞ、エンヴィ。……まったく、動物のようだな、不躾で……他人の懐にやすやすと入り込んでは平気なカオをしている……無防備な、ほんとに無用心な……こんな細い首、ちょっとひねればすぐに折れるだろうに」
「……若、眠っているご婦人に対して呟く言葉ではありませんよ、ソレ」
カズマは護符を外すと、周子の首の傷の極近くまで持っていった。ぱっ、と白光が瞬いて、周子の傷が癒える。
「魔除けには癒しの効力もあるとかいうが……実際このように使えるとは不思議だな」
やはり周子の魔力が強いからだろうか、と、カズマはメガネのブリッジを押し上げて首をひねった。
「エンヴィ、周子を部屋にお連れしろ」
「寝てますし、このまま毛布でもかけて差し上げればよいのでは?」
「他人の気配があって私がくつろげるものか。お前も私の気の細さは知っているだろう、しかも、よりによってこんな粗野な動物……外につまみ出せ」
「若は手厳しい」
そう言ってエンギワルーは軽く息を吐いて。
「いい練習になるのでは?」
「は?何の?」
「宗主殿が若はいつ結婚なさるのかとまたお嘆きでございました」
「そのうちする、といつも言っているだろう」
「若は他人の気配があると、眠れないのでしょう?それではやはりなかなか、結婚は難しい。彼女ならば、そこいらのオンナと違って、仮に同じ部屋で夜を過ごしても抱かれただの妊娠しただのなんだと触れ回り下手に陥れられることは無いでしょう、ちょうどいいのではないですか?一晩こうしてテストしてみたら?他人の寝息も良いものですよ。最高の眠り薬です。歩みよりも大事です」
「いや、不可!」
カズマはぶるりと肩を震わせた。
「この恥知らずの無作法者は、己の王への気を削ぐために私を喰おうと言うのですよ?であれば、財産目当てに私を押し倒すオンナの方がよほど御しやすい」
ぶるぶると何度も首を振って。
「と、いうより、エンヴィ、おまえ私をからかっているだろう」
「ええ」
仕方ないな、とエンギワルーは肩を竦めて周子をソファから抱き上げた。
そのしどけなく眠るカオをしみじみと覗き込んで。
「可愛いではないですか。活きが良くて。なにしろ非常に美人だし」
「そう!非常なんです!非、常、常識が無い!世間知らずで、無作法で、粗野で、こういったタイプは私が一番嫌いなタイプです!王の命令でなければこの屋敷からとっくに追い出しています!」
「全く、若のツッこむ所はそこですか。王宮にいるような、最初っからいろいろ出来上がっているオンナなんてつまらないですよ。私は彼女が好きですがねぇ。まぶしいというか、天然素材といいますか……どうも男も四十を過ぎると、”育てるオンナ”が欲しくなるような気が。不思議なもんだな」
はは、若はまだ若い、とエンギワルーが普段はめったに見せぬ大人の余裕たっぷりの艶めいた笑みを浮かべる。
「実は、息子のコンジョナシが母親を欲しがってましてね。さすがに先日、母親が欲しいと泣き落としで迫られたときには、こう、グッとくるものが。このところ多忙であまりかまってやれなかったので、淋しかったのでしょうか……まぁ、機会があれば誰か適当な女性と再婚でも、とは、かねてより思ってはおりましたが……」
そう言って、ちょっと首を傾げまた腕の中の周子を眺める。
「そもそもコンジョナシを泣かせた多忙の原因は周子ですし。ちょっと責任を取ってもらおうかと。若い彼女なら、コンジョナシとさぞ気が合うだろうと」
「は、母親っ?」
「ええ、私の妻に」
まるで魂でも抜けたようにカズマが呆けたカオをした。
たっぷり長い間呆けて。
ぎ、ぎ、ぎ、と擦音でも伴うかのようにギクシャクとエンギワルーの方に首を向けた。
「すまなかった、エンヴィ、多忙な職務を担わせ、まともに女と接する機会を奪ってしまっていたようだ。お、女ならばほかにもっと、美人でしとやかで気の利く、選びようがあるだろう、従者にこんな粗野な女を押し付けたとあっては私の名が廃る。すすすすぐに、手配しよう、ご、極上の、もっと優れた女を」
「…それは、ダメということですかな?」
「ダメ!ダメに決まっているだろう!もっとまともなものを選べ!」
「冗談だとでも言って欲しい顔をなさっておいでだな」
「いや、冗談だろう?」
「残念です」
「冗談だろう?」
「……まあそういうわけで」
はあ、とエンギワルーが息を一つ吐いた。
「……勿体無いな」
「冗談だと言ってくれ!」
カズマはふるふる、と頭を振った。
「ふ、不穏だな、一体全体どうしたと言うのだ、王も、お前も。まままぁ王は女好きだからいいとしてだな、お前はそう軽率ではなかろう」
しばらく沈黙して。間を溜めた後の言葉は殊のほかカズマに多大なダメージを与えた。
「……だからこそ、貴重かと」
「エンヴィ!」
では、と、エンギワルーは周子を抱き上げたまま部屋を退出しようとする。
「待て」
カズマの言葉にエンギワルーが振り返る。
「彼女を、ここへ置いていけ」
「連れて行けといったのは若ですよ?」
心外、とでも言いたげに軽く眉を上げエンギワルーが振り返る。
カズマはぐっと口の端を下げて腕組をし、はっきりと頷いた。
「物騒だ、私の目の届くところに置いておく」
「物騒?」
「周子をベッドに寝かせてお前もいっしょにそこに寝る気だろう」
「長年仕えておりまするにそのようなことを仰るとは」
エンギワルーがちら、とカズマを睨む。
「私は若のことは何でもお察し申し上げたいと常々願っておりますが、まさか若もワタクシのことを察しておいでだとは。長年仕えるべきものですな、ツーカーですな」
「だから、冗談だと言ってくれ!」
「そういえば昔、王が、果報は寝て待てというのを夜這いのことだと勘違いなさっておいででしたな、ははは、あれには笑いましたな、なかなか良い解釈です、王らしい」
口先で笑いながらも、その仏頂面を一層濃くしてエンギワルーが周子をカズマのベッドに寝かせる。勿体無い、と再び呟くその声をカズマは聞き逃さなかった。
「ソファへ置け」
ぴしゃりと声が飛び、エンギワルーは首をひねる。
「まったく、若は無粋だな。どうせ抱き上げて移動させるんです、酔った女性をより快適なベッドへ横たえる、このことのどこがおかしいのです。そもそも男は、女の体の上で寝るか、まあ下でもいいですが、さもなくば、床の上で眠るもんです。いつまでも神経の細いことを仰ってないで、そろそろホントに結婚する決心をなさい、宗主殿が泣いてましたよ」
きっぱりと言い捨ててエンギワルーが深く一礼し退出する。
一体ナニがドコまで本気なのかさっぱり分からない。
はっきりしているのは結局この周子をベッドの上に残してしまったということだけで。
ババヌキのババをさんざんまわした挙句に結局自分が引き当ててしまったかのような気分である。
まるで狐につままれたように、ぽかん、とカズマはしどけなく眠る周子と二人、部屋に取り残されてカズマはひとしきり唸った。
「一体なんだというのだ……エンギワルーまでまるで悪乗りして。全く、物騒な。縁起でもない。不穏で、本当に頭にくる…ああ、なんて気持ちよさそうに眠っているのだ、全く……水差しの水でもかけてやりたいな」
カズマは周子の寝顔を見ながらぶつぶつと文句を言った。
残った酒を一人で空けて。
カズマはシャワーを浴びて戻ってきたが、やはり周子は自分のベッドでくうくうと小気味良い寝息を立てて眠っている。時折大の字になったり、身を捩ったり、なかなか奔放な寝ザマで、髪をさやさやと拭きながら、カズマはそれを眺める。
今日は疲れたな、他人のこうぐっすりと眠る様というのは案外眠気を誘うものだな、と思ったときには既にうとうとと意識を手離している。
それからとっぷり夜が更けて。
ドア一枚はさんで全く静かなその向こうの気配を察して。
そっとエンギワルーが戻ってみたときには、カズマはベッドの端にちょこんと腰掛けたまま船をこいでいる。
触れたその肩は存分に冷えている。
「若、若、そんな格好で。半裸でいては風邪を引きます、寝るのならちゃんとベッドに横になりなさい」
「……ん」
カズマは促されるがままにベッドに身を横たえ、エンギワルーがその体に毛布をかける。
「……まだまだ子供だな」
人が二人眠るのに全く支障の無い広さのベッドである。まるで兄妹のように平和な寝顔が並んでいる。エンギワルーは空いた酒器を盆に載せ、従者然として退室した。
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- 2005-09-25 03:29
- カテゴリ : 「タトゥー・オブ・ギャラン」/長編/連載中
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