コハリトりみっと
長編恋愛FT「タトゥー・オブ・ギャラン」がメインの小説・雑記サイト。
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Entries

どっひゃー!すんばらしい三人組を!アリア様よりいただきました!
なんですかお三方、チョットマテ!そろいも揃ってお色気過剰でございますよ!
周子、スリット、スリット、ヤバイですって!サービス過剰、っていうかとっても美味しそう!(おい!)で、なんで男衆が流し目なのよ!コハリト卒倒ですよ〜!ふえ〜ん!
いやー、絵板で拝見したときには思いっきりのけぞりました、大喜びでございます!
なんとも色気のある構図で!
周子!すんごい可愛いです〜!「えい!」みたいな(何)。
きらきらした眼差しと口元がなんともかわゆいです!
こんな可愛い顔でスペル繰り出されたら、ギャランなんか火炎でも凍気の嵐でもなんでも甘んじて食らいますね!←バカ
あははー、カズマもどえらくかっちょ良く描いていただいてますが、やー!一体この男はなに考えてんでしょうね。(冷静そうに見せてきっとなんかえっちなことだ…ぇ)
アリア様、とんでもなく素敵な三人組をまことにありがとうございました!
【おまけ】
※アリア様はカズマ好きとのことで、本編とは全く関係のない「見合い写真を選ぶカズマ」を。これはボツったプロットなのですが、番外編を書くだけの体力もありませんで、こんなものですが、パラレル空間に存在しているものですが、そこんとこ割り切っていただきまして、まあお楽しみいただければ光栄でございます……。
「タトゥー・オブ・ギャラン」パラレル
「見合い写真を選ぶカズマ」
※ええと、設定的には32〜44話あたり、カズマがまだ無自覚ながらにラブ?な感じで。ギャランは周子の所有を主張してはいるものの、上手く扱えずぞんざいさが目立つ感じで。
「み、見合い写真か、なにか?」
「ええ。まんざら外れていはいないというか……そのものですね」
ふうむ、とカズマは唸って、メガネを外し、指で目頭を抑えた。なんだかかなり疲れているらしい。経済日報を読んでいるときにはどれほど根を詰めていたってこんな様子を見せたことはないのだが。
机の上を、弧を描くようにぐるりと分厚い台紙の写真が山と積まれている。
それを手でつんつん、と押して。
びくともしないのにつくづく嫌気がさしたようである。
「まさか、エンギワルーがこんなに溜め込んでいるとは思わなかった。仏頂面で、これで私室が広くなります、と言っていたのですけれど……さすがに、ビックリですね、ルドルフは執念深い」
はーあ、と深く息をついてデスクにひじをつく。
こんな疲れた様子のカズマは珍しい。ギャランのためなら不眠不休で働く、芯の強い男だ。
「カズマ様が結婚する気なら、ルドルフはきっと大喜びだね!おめでとう!」
「ナンデスカ、おめでとう!って!気味の悪い!何がめでたいのです!?」
カズマがうめいた。結婚する気は相変わらずないらしい。
「あんたさー、結婚したら、女の人に食われると思ってるんじゃない?女郎蜘蛛とか蟷螂とかだと思って……」
「思ってません」
さすがにそれは言いすぎです、とカズマはキッパリと否定する。
「王が、おれを王にしろ、と言ったんですよ。暗に家督を継げと、言っているんです。後押しするにはやはり、私がグランツ家の家督を継ぐのが手っ取り早い」
「あのバカのために結婚だってできるってことね?」
カズマはふむ、とうなずいた。
「ですがどれも決め手がない。それからあのお方をバカ呼ばわりするなと何度申し上げればよいのです」
「じゃあどれでもいいって事で、二、三人、娶っちゃえば?」
「……ルドルフと同じ事を言いますね」
「じゃあもっと気前良く、全部!……じゃあ体がもたないか」
「数が後宮を超えます、嫌です、そんなの。ルドルフよりえげつない言い方をするな」
周子はそのツッコミを予想していたようにえへへー、と笑う。
「全く、女性とは思えませんねぇ」
かた、とメガネを机に置く。カズマはまたも大きく息を吐き、デスクに突っ伏した。
「こうも真剣に女の人を眺めると結構あてられますね」
心底うんざりしたようにうめく。それから周子を見上げ、まるで壊れたように浅く笑った。
「ふふ。こうしてみると、あなたは黒い点が二つあるだけに見えますね」
「自分で言っててえらく失礼なこと言ってるって思わない?」
「勝気な黒い目が」
そう言いかけてカズマはおもむろに口をつぐんだ。
「じゃあさ、私が決めてあげるよ!」
おもむろに手近な写真をいくつか取るとひっくり返し、どぉれにしよおうかな、と歌いながらひとつずつ指差しまわるその手を払って。
「人の人生、そんなに簡単に決めないでくださいよ!」
「やだな、カズマ様にとって、女の人なんて、それほど意味がないんでしょ?」
「なんか気に障る言い方ですね?私だって、できれば好いた方を選びたいくらいは思いますよ?」
「うへ。意外」
「うへ、ってなんですか、意外って」
そう言ってから、カズマは自分のアゴに手をかけて少し唸った。
「ええ、まあ。そう、だれでもいい、と確かに思ってまいりましたが、いざ、決めるとなると、どうも思い切りがつかないんですよ、変ですね?」
「そうだね、女の人はカズマ様の好きな株と違ってそうそう売ったり買ったりできないからね、って思ったんだけど……ああ、やりそうだね、なんてったって札束で頬ぶってヤっちゃうようなお人だからね」
「その下賎極まりない形容詞、撤回してくださいね」
今度言ったら平手で頬をぶちますよ、と微笑んで。
「条件、てわけじゃあないんですが、以前よりグランツ家および王宮に対して経済波及効果の高い女性がいいなとは思ってまいりましたが」
「どういう条件よ、そりゃ。……あ、それでこの写真の下の数字なわけね?」
写真の下に結構なケタの数字が並んでいる。
「持参金とか、利権とか。婚姻に際し、いろいろと先方が提示してきたものなんですが、どれもイマイチ興味がないというか、食指が動かないというか……」
「ええっ?結構な額じゃない?どれもこれも」
「ベッヴァーラ河やリンツ銅山のほうが余程……」
「あは。私を嫁に出す気?ラインハルトがまたなんか言ってきた?」
カズマはふるふると軽く頭を振る。
「これらの数字を全部足してもなおそれを上回る方が一人。私の私邸を一つは全壊、さらにもう一つ半壊させ、先だっては濁流石という魔石を誤作動させ、王宮を濁流で派手に破壊したあなたの動かした金額は、いったいいくらか分かってます?王宮建屋への災害保険がおりたのなんて、五十年ぶりのことなんですよ!」
「責めてるの誉めてるの?」
「……はて」
カズマはまた笑う。
周子はそんな気の抜けたカズマが珍しいなぁと思いつつ、さらに写真の束をデスクの端に押しやって、その机の上に座った。
手を伸ばし、その、緑の髪をさらりとなでる。
思っていた以上に柔らかな感触に思わず目を細める。
そう、前から一度この緑の髪を撫でてみたかった。陽に透くと、実に不思議な、綺麗な色に輝く。女嫌いで気位の高いカズマ、いつもなら速攻で払われるであろうそんな不躾な指先も、どういうわけか今日は許されている。
「じゃあ、やっぱり、私と結婚する?」
「そう、それが一番ありがたいんですが」
「はい?」
思いもよらぬカズマの言葉に、周子は素っ頓狂な声で聞き返した。
「王は、どこまで本気であなたを所望なさるのかなぁと思いまして」
「どこって」
「好きだと言いつつ、非常にぞんざいな扱いをするときがある、それなりの情があるのでしょうが、いや、どうかな」
「せいぜい良く言ってペットとそう変わらない扱いだと私は思ってるけど」
ふん、と周子が鼻を鳴らす。
「あのバカはこのタトゥーをイヌの首輪程度にしか思っていないわ。いいように玩ばれてるこっちの身にもなって欲しいわよ、腹の立つ」
ふうむ、とカズマは唸った。
「あなた、王についてはどう思います?」
「だから嫌いだって!」
「では、私のことは?」
「こないだ好きだって言ったじゃない、あのバカよりずっと優しいし!」
「……即答、ですね」
カズマはほんのりと微笑んだ。
目の端に浮いた笑みが次第に顔に広がっていく。
「決めました、あなたを妻に迎えます」
周子は首を突き出してかくん、と口を開けた。
「はい?ずいぶん唐突だね、いや、ああ?ち、ちょっとまって、決めました、って、あ、あのう、当人の意思は?」
「え?」
周子の言葉に心底意外そうにカズマが聞き返した。
「だってあなた今、好きだって」
「はあっ?好きって言ったって、そんな結婚するとかしないとかそんな恋愛がどうのこうのと一生のこと言うだけのそんな重い会話をしていたとは全然思わないんだけど?なんで突然そうなるの?お金のハナシしてたんじゃなかったっけ?」
「突然?お金?」
きょっとん、とカズマは目を丸くして周子の言葉を復唱する。それからたっぷり間をあけてから、カズマはふい、と顔をそむけた。
「な、なに?」
覗き込むとカズマはすねたようにやはりふいと顔をそむける。カズマの頬をぎゅむーっとつねって、周子は引きつった笑みを浮かべた。
「あのねぇ、知らないみたいだから言っとくけど、結婚ってのはちゃんと相手の同意がないとできないもんなのよ?勝手に決めるな、こんの変態!世間知らずはどっちよ?あんたホントにお金さえあればどんな女もモノにできると思っているんじゃないの?」
カズマの瞳が不安そうに揺らいだのを見て、周子は付け足した。
「お金じゃ買えないものもあるって、それはグランツの若様には理解し難いことなの?私は好きな相手と結婚するわよ、絶対にね!」
ぐりぐりぐり、とつねって引っ張って、周子は笑う。
カズマは何か言いたげなそぶりを見せたが、上手く言葉が見つからなかったのか、結局口を閉じた。
しばらくの間沈黙し、周子に頬をつねらせるがままにしていたが、やがて、その手を取った。動かぬよう、ぐっと、机に押し付ける。
それからおもむろに椅子から立つと、机に座った周子の上に軽く身をかがめる。
周子は不意に近づいてきたその胸を軽く押し戻して。
「なにすんの?」
「黙って」
毅然と一言返されて。
周子は紫の綺麗な瞳がすうっと眇められ優美に閉じられるのを間近で見た。そのまぶたの美しさといい、綺麗にならんだやわらかそうな繊細そうな睫といい、すらりと通った鼻筋といい、思いも拠らぬ美しさに見惚れたと言っていい。
「……ん」
ほんのりと口付けた唇が離れたのが、正直、惜しいと思った。
長いまつげがゆっくりと動く。
まるで、薄い紫の花が開くような華麗さだった。
戸惑いに揺らぐその瞳は何より美しかった。
囚われたように見惚れていた。カズマの指が周子の頤にかかる。もう片方の手が、周子の肩を軽く押さえ、再び唇が触れた。
ノックもなしに唐突にドアが開いた。
こんなことするのはまあ誰かは決まっている。
ぼんやりと、まるで紗のかかったような優美なひと時から我に返ると周子は、カズマに抱き寄せられたまま、軽く首をひねって戸口の方を見た。
ギャランが、ドアノブを握ったまま、立ちすくんでいる。
青い目が心底びっくりしたように見開いている。
「予想外の構図だな」
呆然とつぶやいて。
たっぷり間を開けて、ギャランはようやく我に返ったのか、がしがしと頭を掻いた。
「えええっと、こういうときは……その……なんだ?ええと?”お呼びでない”?」
―――よんでどーする、
と、周子は内心ツッコミつつ。
「”お邪魔しました”!でしょうがッ!こんの語彙不足バカ男め!」
手近な机上の見合い写真をギャランの端正な顔にめがけてぶん投げた。
当然避けられるはずのそれをギャランは額にもろに食らって。
ばし、と派手な音を立てて落ちる。
「ああ、じゃま、じゃまね……」
すっかり気が抜けたように呟くと、後手にぱたりと戸を閉めて出て行く。
* * * * *
「うわーい!このナッツは私の好物〜!お肉と炒めたら香ばしくって美味しいんだよね〜!」
並べられた夕食を一目見るやにっこりご機嫌な周子である。たちまちに鼻歌が始まるくらいにご機嫌である。
「あー、あれ、あいつは?」
ダイニングテーブルにひじをついて、ギャランはフォークで食器を軽く叩くと周子の気を引いた。
周子はデザートのぶどうを一粒口につまみつつ、ギャランを見る。
「行儀わるいなぁ、叩くの。しつけの鬼が見たら目を剥くよ?あいつ?ご当人は今夜はルドルフのところの夜会にご出席だけどね、またなにか暗躍?ってところじゃないの?」
「ふうん、じゃあオレもたまには王宮にでも帰るかな」
ギャランはフォークをテーブルの上に放り投げた。
見れば、その食事には全然手がついていない。
「何言ってんの?食事の支度ができてるってのに。出されたもんきちんと食べるのが礼儀でしょう?」
そう言いつつ、周子は自分の分をトレイに乗せる。
「で、おまえはどこ行くんだ?」
「ん?部屋食?読みかけの本が途中でさ」
「本読みながら飯食う方がよほど行儀悪いぞ?つまみ食いもな」
「しつけの鬼がいぬ間になんとやらで」
「ここで食え」
ぴた、と周子の手が止まった。
ひく、と頬を引きつらせている。
「……いま命令したわね?」
「オレと食事を一緒にできるんだ光栄に思え」
ギャランはぶすっとそういうとおもむろに食事を口に運び出した。
このごろ意味不明な命令が多いよ!私を殺したいの?と一通り悪態を吐いてから、周子はテーブルについた。
「あ!おいし!」
たちまちににっこりと周子は微笑む。その笑顔をしばらくの間ギャランはじいっと見つめて。
「なあ、おまえ、あいつとはそんな関係なのか、畜生、いつからだよ」
「なあに?さっきの話?……考え事しながら食べるんじゃないよ?バカなんだから」
「いったいいつの間にそんなことになってんだ?」
「不意打ちよ不意打ち」
「不意打ち?」
からん、とギャランがスプーンを落とした。
青い目をしばたかせている。
「おまえ、不意打ちって、カズマがそんなことするわけないだろ」
「知らないわよあんたの方が付き合い長いんでしょ」
「あれが自分から女にキスするなんて今まで聞いたことがないぞ」
「じゃあ、女に見えてないんでしょ」
「……あいつは男は嫌いだしな……い、犬?犬か何かかな?」
ギャランは真剣に唸った。
「ははあん、あんたはやっぱし私のことを犬ぐらいに思っているのね?どおりで扱いがぞんざいだと。タトゥーさえなけりゃあんたなんかとっくのとっくに殺してるわよ、良かったわね!長生き万歳!」
周子はさばさばとそう言って軽く肩を竦めた。
「あの人の好きなのはお金でしょ、持参金とか何とかちょうどお金の話してたし。私が金塊にでも見えたんじゃないの?メガネしてなかったし」
「その割にはおまえ、ずいぶんとうっとりしてやがったな」
「……」
周子は珍しく少し赤くなった。ふ、ふふふん、と開き直ったように不敵に笑って。
「そりゃうっとりもするわよ、あんなきれいな目で見られたら」
「まじで?」
心底意外そうにギャランがうめいた。
「あの人があんなお色気な眼差しをするとは思わなかったわ。あれで女嫌いとは、全く世の中不思議。お金なんかなくたって、あれで口説かれたらどんなオンナもイチコロよね、私もすっかり油断しちゃってたし。あの人あんまりにも女っ気ないものだから。ああ、でも正直言って素敵だったな」
周子はつ、と目を細めて微笑んだ。
「目も睫も、すっごい綺麗で。あの人、自分が美形なの全然気にしていないというか、無自覚無頓着?ほんと、不思議なくらい。あんな間近で、キスして、すっごおおく、綺麗だった、紫の目なんだよ!ホント珍しい色だよね!」
そう褒め称えて周子はギャランを睨む。
「いままでキスって、あんたにしかされたこと無かったもんね。いい思いなんてちっともしたことなかったし。キスとかって、案外、恋愛とかってのはいいものかも。タトゥーの所為でずいぶんすさんだ気になっていたけど」
なんか得した気分?とか言いながら軽く首をひねる周子をギャランはしばらく眺めて。
おもむろに席を立つと、食事を口に運ぶ周子の左腕をつかむ。
「何よ!あんたがここで食え、ッったのよ!」
「お前はほんとにおれにはつれないな」
「日頃の行いを、自分の胸に聞いてご覧」
周子はフォークをざくりとギャランの胸板に刺した。
「なあ、お前のハートはこっちにあるんじゃあないのか?」
ギャランはおもむろに指で周子の左腕の名をなぞった。ぞくりとつい感じてしまうのを隠して、周子は身を引いた。
「そ、それは呪が発動したからね、でも、ナンだろ、確かにあの時ときめいたわよ。なんか新しい心臓が出来たって言うか、なんか、そんな、感じ?」
タトゥーなんかなくたって、きっと私は他に人を好きになれるんだわ!やけにさばけた正直な周子の言葉に、ギャランはさびしそうな目をする。
言葉が見つからないとでもいったふうにギャランは周子の腕を取ったまま、しばらく周子を見つめ……周子はそんなギャランを不審げに見返し……だんだんと眉根が寄って来る。
不快そうな周子の表情にたまりかねたのか、それをさえぎるように、おもむろにギャランが口づけた。
短いが、強引な深いキスだった。
「ああっ、私のナッツっ!」
口の中から好物のナッツが奪われたのにようやく気づいて周子は短く抗議の声を上げた。
「……色気のねぇ」
ギャランは呟くが、すぐににやっと笑った。舌の上に親指の先ほどの大きさのナッツを載せている。
「返して欲しい?」
「要らんわ!」
周子が叫んだ。
ふん!と鼻息も荒くカオを背ける。その頤をぐいっとつかみ寄せて、再びギャランが口づける。
―――ナッツ?と思ったがどこにもなくて。
ギャランの舌が、くすぐるように絡んでくる。
思わず、ナッツを探した周子の舌と絡んだ。
存分に深く口付けてからようやく我に返った周子が力いっぱい突き放すと、ギャランは、はあ、と一つ吐息を漏らした。
「……おまえは誰とでもキスするんだな」
「勝手にキスしといて何てこと言うのよ!失礼な!」
周子は肩を震わせ唇を拳で拭った。
「数こなしてるとかなんだか言ってるけどあんたのキスなんざちっとも心に響かないわよ!心がこもってない!こんな強引に!不意打ちよ不意打ち!なんてアッタマに来るのかしら、あんたってバカは!」
「失礼な奴だな……不意打ちならあいつもおんなじだろ」
「勝手にナッツ取っといて失礼はどっちよ?」
「ナッツ?まだナッツの話?」
真顔でギャランが首を捻る。
「カズマ様の方がずっと素敵なキスだったわよ!こんな舌を絡めてくるようなえげつないキスなんてしなかった!そうよ!優しくって!私のことを好きだってちゃんと伝わるやさしいキスで……え?」
周子は自分の言葉の途中で軽く飛び上がった。
「え?」
ギャランが聞き返す。周子は動揺したようにギャランを見て、聞いた。
「あの人、私のこと、好きなの?」
「いまさらなにいってやがる」
「うそ、びっくり」
口元に手を当て、たっぷり間を空けてから、周子はやがてくすりと笑った。
「なんで笑う?」
いぶかしげにギャランが聞いてくる。
「あ、いや、ちょっとうれしいかも、って思って」
「なんでそうなる?」
ああ、畜生、とうめくとギャランがもう一度周子にキスをしようとし、周子がばしん、とその金髪を打ってさえぎる。
抗議の色をきつく湛えた勝気な黒目に射抜かれて、ギャランは小さく舌を打った。
しばらく考え、やがて考えあぐねたように、さじを投げたような表情をした。
「その、好きだと伝わるってヤツはどうやるんだ?」
率直過ぎるその言葉に、周子はひく、と頬を引きつらせる。
「……何する気?」
「その、あー、なんだ、練習?を……」
ばちん、と平手がとんだ。
「人を練習台にするなボケ!」
「お前の好きな方法でヤりゃあ大人しくなるんだろっ!?」
「相手によるのっ!」
バカ、と大きく言って、周子は口をすすぐように、グラスの水をイッキのみした。
ギャランは、わけわかんねぇ、と呟いて頭を掻いている。
周子が怒りに任せて足音も高くダイニングを出て行くのを察して、その背に声をかける。
「おい!出されたもんは全部食うんじゃないのか?」
「食べてるそばからキスされてとられりゃ、口に物入れる心もとなさで泣きたくもなるわよ!大人しく食べてられっか!ボケ!変態!ナッツ、あれ最後の一個だったんだし!私の好物なのに!」
「……たく、まだナッツの話してたのか?」
周子の言葉に首をひねりながら。
ギャランは、食器を押しのけるとがっくりとテーブルに突っ伏した。
* * * * *
廊下の前方でエンギワルーがピタリ、と足を止めた。どかどかと大理石の床を踏み砕くかのような勢いでこちらへ向かって歩いて来る周子を、半ば硬直して見る。
「何をそんなに怒っている?ずいぶん物騒な表情だな」
「知らないわよ!二人してキス魔よ今日はおかしな日だわ!もう寝る!みんなして私をからかって!キスすりゃ私がぼうっとなるって思ってるんだわ!」
周子は怒りに任せて事の次第をまくし立てた。
「……若が?」
エンギワルーは意外そうに呟く。ふううむ、とうなっているのか微笑んでいるのかよく分からぬ表情である。
「言っといて!あんの変態共に!からかうなって!ええそうよ!私はそこいらの男になんざ揺れないわよ、ああむかつく!私はロレンス一筋でゴーよ!絶対探す、絶対妥協しないんだから!」
「まあ、そんなに荒ぶらずに。ほら、いま手折ってきたところですよ、綺麗でしょう?ずいぶん手間をかけて育てたのですよ。さ、花でも愛でて。ほら、ヘタするとまた若の屋敷を壊しかねない。これまでの実績で保険の掛け金が既に三倍に跳ね上がっているのです。これ以上は勘弁願います、保険金詐欺の疑いをかけられかねないからな」
どこか論点のずれている慰め方ではある。
「ほんと、綺麗ね」
エンギワルーは水揚げをした後、お持ちしますよ、と言う。
さっぱりした、気持ちの良い提案である。周子はちょっと目を細めた。
「ありがとう。やっぱ男は四十過ぎてからよね。クルはちょっとオヤジ度が過ぎてたけど、でもキスの一つや二つでがたがた抜かすような青さは無かったもんね!」
うんうん、と感心したように頷く周子は、不意に、エンギワルーの武骨な顔が近づいたのを悟ってはっ!と身を竦めた。
「……な、なに?」
「たまには軽い嫌がらせでも」
唇が触れそうなところで寸止めして、仏頂面のまま言う。
「男はいくつになっても男だ、油断召されるな。ま、これは日ごろ周子にはひどい目に合わされているその意趣返しということだ、ほう、ずいぶんと驚いているな」
ばちん!
ものすごい勢いで平手がとんだ。
「今日はまこと冗談も通じぬな」
ぼそっと、左頬をさすりつつ、エンギワルーはぼやいた。
「若の意図は微妙だな」
* * * * *
「ナッツ?」
「厨房を探したら、まだ残ってた。好きなんだろ、このナッツ」
「は?」
存分に険の残る笑顔で周子はギャランを見上げた。
この男は、夜更けにナッツの袋を下げて人の部屋にやってきていったいだからなんだというのか?
「ナッツぐらいでそんなに怒るなよ?……ああ、さっきは悪かったよ」
ギャランはしょんぼりと謝ると、おもむろに周子の口にナッツを一つ、突っ込む。周子は、そのナッツの硬さと味に、うぐ、と低くうめく。
「って、硬っい!苦いじゃん、これは炒めて熱を加えないと食べられないの!バカ!エンギワルーに聞いといでっ!」
オトトイキヤガレー!な勢いで胸を押す周子のその腕を取ると、ギャランはにこりと微笑む。
「硬い方が、取りやすくていい」
「………んっ」
慌てて周子が身を捩ったが既に遅い。
がっしりした腕の中で存分にキスを交わして。
「なんなの?なんなのコレはいったい何の嫌がらせ?」
周子は涙目でうめいた。
ギャランはがっしりした腕で周子を押さえ込んだまま放さない。
「カズマとはどうやった?」
「は?」
「いまおれは珍しく向上心というもので燃えているぞ?レクチャーしろ、おれはぜったい上手くできる、これでお前のハートはおれにイチコロだ」
ちっとも悪びれぬ言葉である。
あまりの言葉にピタリ、と硬直した周子から手を放して。むしろギャランは腰に手を当てて軽くふんぞり返っている。どこか不敵に、自信たっぷりに微笑んでいる。青い目がキラキラと光っている。
たっぷり間をあけて後、あまりの不可解さに周子は腕組みをして大きく唸った。
「あんたさ、いくらいままでカズマ様と一心同体なくらい依存しあってたからってなに?ナンなの?やきもち?カズマ様をとられたとかって思ってるの?ほんっとにしつっこいよ!もういい加減にしてよ!なんであんたなんかとキスしなきゃなんないのよ!」
「へ?」
「ああやきもち!ダチにオンナが出来たからって、何も嫌がらせしなくたって!心配ご無用よ!別にそんなにそんなに特別な感情持ってるわけじゃないし!ただちょっと驚いたと言うか、いい気分になっただけだし!そもそもカズマ様とそんな関係になること無いし!」
「……無いのか?」
ギャランは首を傾げる。しかしカズマを取られてヤキモチとはなんのことやらサッパリだな、お前の言葉はイマイチ良く分からんな、とぶつぶつと呟く。
「お前、カズマとラブラブなんだろ?あいつのキスがさぞかしヨカッタんだろ?おれだってな、そんなキスの一つや二つ……」
「ないないない!だからもう、ヘンなことやめて!」
「?おまえあいつに惚れたんじゃないのか?……ぐはっ!」
油断していたのもあって、周子の回し蹴りを思いっきり首筋に食らうと、さすがにギャランはどさりと床にオチた。
「キスしたからっていちいちほれてちゃ、とっくにあんたとランデブーだわよ!ああ、ほんっと!アッタマ来る!なんなのよこの人!」
「……」
あっさりと意識を手離したギャランは、どこか安心したような表情を浮かべている。
「ちょっと!こんなとこで寝ないでよっ!あれっ!ギャラン!ちょっと!大丈夫?大丈夫?うわあ、どうしよう!っていうか、え、エンギワルー!」
(終)
2件のコメント
つづき、よみたいでーす(こそこそ)
- 2005-10-14
- 編集
んん?篁さんこんにちは。
ひゃー、ここはこっそり付け足したのに、早速バレテル……地獄耳ならぬ地獄目(こーゆーときなんかいいことばあったようななかったような)。本編もだいぶこの辺りまですすんできたので(まだちょっと早いかも)引っ張り出してきたのですが、お読みくださりありがとうございます。
うん、コレはね、これは、つづきなんてないですよー(叫)。ここでおしまい。ごめんなさい。ごめんなさい。
ひゃー、ここはこっそり付け足したのに、早速バレテル……地獄耳ならぬ地獄目(こーゆーときなんかいいことばあったようななかったような)。本編もだいぶこの辺りまですすんできたので(まだちょっと早いかも)引っ張り出してきたのですが、お読みくださりありがとうございます。
うん、コレはね、これは、つづきなんてないですよー(叫)。ここでおしまい。ごめんなさい。ごめんなさい。
- 2005-10-15
- 編集
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