コハリトりみっと
長編恋愛FT「タトゥー・オブ・ギャラン」がメインの小説・雑記サイト。
初めての方へ | 絵板 | RSS![]()
Entries
周子はおもむろにベッドから起き上がると、裸のままシャワーを浴びにふらふらと部屋を横切って歩いて行ってしまった。
「……………………」
その後姿を唖然と見遣って。
いや、今は素っ裸でうろうろするなと注意する場合ではない、とエンギワルーは軽く頭を振った。
周子はほんの一時間ほどしか眠っていない。先ほどの焦燥ぶりを思うともっと眠るべきだとエンギワルーは思ったのだが、シャワーを浴びて幾分正気を戻した彼女が空腹を訴えたので、ひとまず簡単な食事を用意させた。
水のしたたるのも拭かずつややかな長い黒髪をそのままに、周子は食事に手をつけ、一口、口に運ぶや、おもむろに顔をしかめた。
「舌、切ってたっけ」
周子はいっそううんざりしたように、エンギワルーを見上げる。
「あんまり、覚えていないんだけど……キラーウルフ、あなた何処まで知ってる?」
「あの場でのことならば、全部」
エンギワルーはまじまじと見つめてくる黒目に真正面からいつもどおりの仏頂面のままで答えた。
「ロレンスのことは?」
「知りません」
周子は白けた笑いを吐いた。
「知ってるわね。で、異形の者は?」
「あれが初めてです」
「あなたはただの従者じゃないのね?」
「従者です。だがひとつ申し上げれば、前身は敵国セリアからの亡命者だ」
ふうん、と周子は軽く喉を鳴らした。セリア、その国名を胸の奥で反芻する。
「名のある軍人とは前に聞いたけど。なるほど見事な太刀筋で」
「その、矢継ぎ早で、脈絡の無いほどに飛躍した短い問いは、頭の回転のよさゆえか?」
エンギワルーは低い声でそう切り返したのだが。
「頭といえば、ついさっき、あのど金髪バカ男がいたような気がしたんだけど、気のせい?」
―――とうとう、夢にまで出てくるようになったか、あのど金髪、
と、うんざりしながら周子はうめいて。
「タトゥーの呪は本当にそら恐ろしい」
「いえ、王はそれはそれは大変なおかんむりようで……」
「げ!?」
エンギワルーによれば、草刈から戻ってきたギャランは周子が死んだように眠っているのを見て、そしてやはり時折ロレンスの名を呼ぶのを聞いて、蒼白になるほどきつくこぶしを握りしめ怒りを抑えていたという。
一瞬の間ののち、周子は、ばっ、とトレイを押しやり、ソファから立ち上がった。
「んじゃ、逃げるが勝ち、って事で、あとよろしくっ!……ふがっ!」
部屋を飛び出そうとし、入ってきた主にどしん、とぶつかると、無残に床に転がった。
「ああ、こっちじゃなくて、窓からにしとけば……」
「生憎この部屋の窓は嵌め殺しだ、さっきの部屋とは違うんでな」
ぞっとするほど威圧的な声が上から降ってくる。
しゃがんだギャランの憮然とした青い目が冷ややかに覗き込んでくる。
床を這ってそれでも逃げようとする周子の首根っこをつかむと、ずるずると引きずり、ベッドの上にほうった。
「なんでお前は大人しくしていない!」
「痛いって!」
組み敷いて、周子の目を覗き込んでくる。
「その目は確かにおれを映しているな?」
「は、はい見えてますです」
ふう、と息を吐くと、その答えに満足したのか、ギャランは少し力を緩めて。
「また、うなされてたぞ、ロレンスの名ばかり呼んでた」
「ロレンス……」
周子は切なげに目を伏せる。
「ギャラン、私ロレンスに会いたい。この手を離して。私を自由にして」
途端、青い目が明らかにムッとする。
「五百年も時を越える奴がそうそういてたまるか!」
「でも!」
組み敷かれた腕に再び思いきり力をこめられて。
折れんばかりのその強さ、その痛みに周子は顔をしかめしばし言葉を失った。
「……おれがロレンスだろ」
冷たい長い沈黙。
真摯な青い眼差しで周子を射抜くように見つめるが、周子はそれを受け止めるでもなく、あっさり視線を泳がせて。
「まずはあんたのそのおバカな頭をどっかに修理に出してですね、私は一人ででもなんででもなんとかロレンスを探しに行かないと」
あーはーはー、とかるーく笑う周子に、
「いいかげんに、しろ!」
ギャランが怒鳴った。
「さっきのはなんだ、魔物だろう、その前だって……エンギワルーが吐いたぞ、異形のものが出て来て、お前を襲ったってな!お前を名指ししたんだってな!おまけにロレンスが差し向けたって言うじゃねぇか!つーこた、さっきのデカ蜘蛛だって、そうだろうが!」
「差し向けたかどうかは……」
「殺されかけてなに寝ぼけてやがる!」
「うるさいな、ロレンスは悪くない!私の婚約者だ!」
矢継ぎ早の罵声の応酬に、エンギワルーはさすがに硬直して見守っていたが、婚約者だと叫んだ周子の噛み付くようなその言葉に、ギャランがその頬を平手で打った。
これはまずい、と間に割って入ろうと一歩足を踏み出した途端、
「キラン!」
不意に周囲の空気が不穏に収縮したかと思うと、強烈な冷気が炸裂した。
「―――っくっ!」
とっさに身を竦めたが、かばった左腕にびっしりと霜がはっている。致命傷にならぬ程度に手加減をしているとはいえ、遠慮なく攻撃呪文を繰り出してくるあたり、相当に気が立っているに違いない。
「王!」
「くっそ!ちったあおれの話を、聞け!ロレンスなんざおれが叩斬ってやる」
至近距離で真正面から、冷気の攻撃をまともに食らい、ギャランが凍りついた体を、頭を、ばさりと振る。氷の粉がキラキラと宙に舞った。
ばたばたと廊下を駆けて来る音がして。
戸口でああ、やっぱりまた呪文を、とカズマがうめいた。
「――えッ?」
周子は、たっ、と駆け出すとカズマの胸に飛び込んでいる。胸にしがみつかれたほうのカズマはビックリしたように紫の目をまん丸に見開いて。
「け、けんかに呪文は禁止で、王に逆らうことは一切、禁止、で……」
言おうとしていた言葉をぽろぽろと口の端からこぼしつつ。
周子がその胸の中で激しく首を振った。
「ギャランが、ロレンスが私を殺そうとしてるって、言った!」
「え?」
「わたし、絶対、ロレンスに会うのよ!私の主はロレンスだもの!こんな、わがままでバカな男が主だなんて、絶対イヤ!こっちで、私は一人ぼっちなのよ!私はたった一人だ、ロレンスじゃなくて、じゃあ、いったい、誰を頼ればいいの!!」
ものすごい勢いでまくし立てる周子を、カズマは何とか抱きしめて。
落ち着かせるように、背中を叩くと、
「その、ええと、私を頼って、下さい?」
泣いてるんですか、と困惑したように、ため息をついた。
「ルドルフがいるんです。極力大人しくしていてください。呪文もなしでお願いします。ルドルフまでもが寄越せと始まったら、それはそれは厄介ですから……あの男は、一度定めたら強情ですので……」
カズマはなだめるように優しく言いながら、指先で周子の涙を拭う。
「ああそっか、ごめん、また屋敷壊して、そういえば既にずいぶん派手にやっちゃってたりなんだりしてるけど、ルドルフが何か文句でも……?」
そう言って我に返ったように体を離そうとする周子を今度はカズマがしっかり抱きしめて。
「いえ、ルドルフはまだぐっすり眠ってますから」
「また気絶させたのね」
また、というその言葉にカズマは少々不満げだ。
「そういった処置を必要としなければ、先ほどの蜘蛛の騒ぎなどももっと早くに駆けつけられたと思うのですが……ところで、王も真の意味で真っ二つの剣を手に入れたことですし、ねぇ、周子、もう少し我々を頼ってはくださいませんか?我々はあなたの力になりたいと思っています」
腕の中の周子が戸惑ったような潤んだ目で見上げてくる。
カズマはまっすぐにその黒い目を見つめた。
「あなたが心配でなりません」
「ナンダソレ!」
ぶちきれたギャランが腰の剣を抜くと、鞘ごと二人めがけて投げつけた。とっさに割って入ったエンギワルーがそれを払い、輝石をちりばめた頑丈な鞘が床上で硬い音を立てた。
「なんだそのらぶらぶなのは!」
「は?」
あわてて顔を上げたカズマの鼻先からメガネがずり落ちる。
怒り狂った二つの青い目が射るようにこちらを睨んでいる。
「こいつの主はおれだぞ!いくらお前でも、横からかっさらうのは、許さん!」
「いえ、なにも……」
「ならばこちらへ連れて来い」
「は」
カズマはほとんど条件反射ともいうべき従順さで、周子をひらりと抱き上げると、ギャランの元へ連れて行き、その胸に抱かせた。
「カズマ様のバカ!」
びったん!と引渡し際に頬をぶたれて。メガネがすっ飛んでいく。
「……メガネが」
バカみたいな言葉を呟いて。カズマは呆然と立ち尽くし、ギャランがベッドに周子を組み敷くと有無を言わさず口づけるのを見ていた。
「ロレンスのことは一切禁止だ、おれはお前のタトゥーの主だ、逆らうな」
やがて、血の味がする、と呟くと身を起こしたギャランは、噛み切られた自分の口の端をこぶしで拭った。
周子はぼろぼろと涙をこぼしながら、それでも気丈な眼差しで自分を組み敷くギャランを睨みつけている。
怒りに揺れる黒い眼差しはいっそう色めいて見えた。
カズマはこれまで味わったことのないような不穏な感情に肌がざわめくのを感じた。
<< [tog]44 Back | [tog] Top | Next [tog]46 >>
「……………………」
その後姿を唖然と見遣って。
いや、今は素っ裸でうろうろするなと注意する場合ではない、とエンギワルーは軽く頭を振った。
周子はほんの一時間ほどしか眠っていない。先ほどの焦燥ぶりを思うともっと眠るべきだとエンギワルーは思ったのだが、シャワーを浴びて幾分正気を戻した彼女が空腹を訴えたので、ひとまず簡単な食事を用意させた。
水のしたたるのも拭かずつややかな長い黒髪をそのままに、周子は食事に手をつけ、一口、口に運ぶや、おもむろに顔をしかめた。
「舌、切ってたっけ」
周子はいっそううんざりしたように、エンギワルーを見上げる。
「あんまり、覚えていないんだけど……キラーウルフ、あなた何処まで知ってる?」
「あの場でのことならば、全部」
エンギワルーはまじまじと見つめてくる黒目に真正面からいつもどおりの仏頂面のままで答えた。
「ロレンスのことは?」
「知りません」
周子は白けた笑いを吐いた。
「知ってるわね。で、異形の者は?」
「あれが初めてです」
「あなたはただの従者じゃないのね?」
「従者です。だがひとつ申し上げれば、前身は敵国セリアからの亡命者だ」
ふうん、と周子は軽く喉を鳴らした。セリア、その国名を胸の奥で反芻する。
「名のある軍人とは前に聞いたけど。なるほど見事な太刀筋で」
「その、矢継ぎ早で、脈絡の無いほどに飛躍した短い問いは、頭の回転のよさゆえか?」
エンギワルーは低い声でそう切り返したのだが。
「頭といえば、ついさっき、あのど金髪バカ男がいたような気がしたんだけど、気のせい?」
―――とうとう、夢にまで出てくるようになったか、あのど金髪、
と、うんざりしながら周子はうめいて。
「タトゥーの呪は本当にそら恐ろしい」
「いえ、王はそれはそれは大変なおかんむりようで……」
「げ!?」
エンギワルーによれば、草刈から戻ってきたギャランは周子が死んだように眠っているのを見て、そしてやはり時折ロレンスの名を呼ぶのを聞いて、蒼白になるほどきつくこぶしを握りしめ怒りを抑えていたという。
一瞬の間ののち、周子は、ばっ、とトレイを押しやり、ソファから立ち上がった。
「んじゃ、逃げるが勝ち、って事で、あとよろしくっ!……ふがっ!」
部屋を飛び出そうとし、入ってきた主にどしん、とぶつかると、無残に床に転がった。
「ああ、こっちじゃなくて、窓からにしとけば……」
「生憎この部屋の窓は嵌め殺しだ、さっきの部屋とは違うんでな」
ぞっとするほど威圧的な声が上から降ってくる。
しゃがんだギャランの憮然とした青い目が冷ややかに覗き込んでくる。
床を這ってそれでも逃げようとする周子の首根っこをつかむと、ずるずると引きずり、ベッドの上にほうった。
「なんでお前は大人しくしていない!」
「痛いって!」
組み敷いて、周子の目を覗き込んでくる。
「その目は確かにおれを映しているな?」
「は、はい見えてますです」
ふう、と息を吐くと、その答えに満足したのか、ギャランは少し力を緩めて。
「また、うなされてたぞ、ロレンスの名ばかり呼んでた」
「ロレンス……」
周子は切なげに目を伏せる。
「ギャラン、私ロレンスに会いたい。この手を離して。私を自由にして」
途端、青い目が明らかにムッとする。
「五百年も時を越える奴がそうそういてたまるか!」
「でも!」
組み敷かれた腕に再び思いきり力をこめられて。
折れんばかりのその強さ、その痛みに周子は顔をしかめしばし言葉を失った。
「……おれがロレンスだろ」
冷たい長い沈黙。
真摯な青い眼差しで周子を射抜くように見つめるが、周子はそれを受け止めるでもなく、あっさり視線を泳がせて。
「まずはあんたのそのおバカな頭をどっかに修理に出してですね、私は一人ででもなんででもなんとかロレンスを探しに行かないと」
あーはーはー、とかるーく笑う周子に、
「いいかげんに、しろ!」
ギャランが怒鳴った。
「さっきのはなんだ、魔物だろう、その前だって……エンギワルーが吐いたぞ、異形のものが出て来て、お前を襲ったってな!お前を名指ししたんだってな!おまけにロレンスが差し向けたって言うじゃねぇか!つーこた、さっきのデカ蜘蛛だって、そうだろうが!」
「差し向けたかどうかは……」
「殺されかけてなに寝ぼけてやがる!」
「うるさいな、ロレンスは悪くない!私の婚約者だ!」
矢継ぎ早の罵声の応酬に、エンギワルーはさすがに硬直して見守っていたが、婚約者だと叫んだ周子の噛み付くようなその言葉に、ギャランがその頬を平手で打った。
これはまずい、と間に割って入ろうと一歩足を踏み出した途端、
「キラン!」
不意に周囲の空気が不穏に収縮したかと思うと、強烈な冷気が炸裂した。
「―――っくっ!」
とっさに身を竦めたが、かばった左腕にびっしりと霜がはっている。致命傷にならぬ程度に手加減をしているとはいえ、遠慮なく攻撃呪文を繰り出してくるあたり、相当に気が立っているに違いない。
「王!」
「くっそ!ちったあおれの話を、聞け!ロレンスなんざおれが叩斬ってやる」
至近距離で真正面から、冷気の攻撃をまともに食らい、ギャランが凍りついた体を、頭を、ばさりと振る。氷の粉がキラキラと宙に舞った。
ばたばたと廊下を駆けて来る音がして。
戸口でああ、やっぱりまた呪文を、とカズマがうめいた。
「――えッ?」
周子は、たっ、と駆け出すとカズマの胸に飛び込んでいる。胸にしがみつかれたほうのカズマはビックリしたように紫の目をまん丸に見開いて。
「け、けんかに呪文は禁止で、王に逆らうことは一切、禁止、で……」
言おうとしていた言葉をぽろぽろと口の端からこぼしつつ。
周子がその胸の中で激しく首を振った。
「ギャランが、ロレンスが私を殺そうとしてるって、言った!」
「え?」
「わたし、絶対、ロレンスに会うのよ!私の主はロレンスだもの!こんな、わがままでバカな男が主だなんて、絶対イヤ!こっちで、私は一人ぼっちなのよ!私はたった一人だ、ロレンスじゃなくて、じゃあ、いったい、誰を頼ればいいの!!」
ものすごい勢いでまくし立てる周子を、カズマは何とか抱きしめて。
落ち着かせるように、背中を叩くと、
「その、ええと、私を頼って、下さい?」
泣いてるんですか、と困惑したように、ため息をついた。
「ルドルフがいるんです。極力大人しくしていてください。呪文もなしでお願いします。ルドルフまでもが寄越せと始まったら、それはそれは厄介ですから……あの男は、一度定めたら強情ですので……」
カズマはなだめるように優しく言いながら、指先で周子の涙を拭う。
「ああそっか、ごめん、また屋敷壊して、そういえば既にずいぶん派手にやっちゃってたりなんだりしてるけど、ルドルフが何か文句でも……?」
そう言って我に返ったように体を離そうとする周子を今度はカズマがしっかり抱きしめて。
「いえ、ルドルフはまだぐっすり眠ってますから」
「また気絶させたのね」
また、というその言葉にカズマは少々不満げだ。
「そういった処置を必要としなければ、先ほどの蜘蛛の騒ぎなどももっと早くに駆けつけられたと思うのですが……ところで、王も真の意味で真っ二つの剣を手に入れたことですし、ねぇ、周子、もう少し我々を頼ってはくださいませんか?我々はあなたの力になりたいと思っています」
腕の中の周子が戸惑ったような潤んだ目で見上げてくる。
カズマはまっすぐにその黒い目を見つめた。
「あなたが心配でなりません」
「ナンダソレ!」
ぶちきれたギャランが腰の剣を抜くと、鞘ごと二人めがけて投げつけた。とっさに割って入ったエンギワルーがそれを払い、輝石をちりばめた頑丈な鞘が床上で硬い音を立てた。
「なんだそのらぶらぶなのは!」
「は?」
あわてて顔を上げたカズマの鼻先からメガネがずり落ちる。
怒り狂った二つの青い目が射るようにこちらを睨んでいる。
「こいつの主はおれだぞ!いくらお前でも、横からかっさらうのは、許さん!」
「いえ、なにも……」
「ならばこちらへ連れて来い」
「は」
カズマはほとんど条件反射ともいうべき従順さで、周子をひらりと抱き上げると、ギャランの元へ連れて行き、その胸に抱かせた。
「カズマ様のバカ!」
びったん!と引渡し際に頬をぶたれて。メガネがすっ飛んでいく。
「……メガネが」
バカみたいな言葉を呟いて。カズマは呆然と立ち尽くし、ギャランがベッドに周子を組み敷くと有無を言わさず口づけるのを見ていた。
「ロレンスのことは一切禁止だ、おれはお前のタトゥーの主だ、逆らうな」
やがて、血の味がする、と呟くと身を起こしたギャランは、噛み切られた自分の口の端をこぶしで拭った。
周子はぼろぼろと涙をこぼしながら、それでも気丈な眼差しで自分を組み敷くギャランを睨みつけている。
怒りに揺れる黒い眼差しはいっそう色めいて見えた。
カズマはこれまで味わったことのないような不穏な感情に肌がざわめくのを感じた。
<< [tog]44 Back | [tog] Top | Next [tog]46 >>
- 2005-10-26 04:41
- カテゴリ : 「タトゥー・オブ・ギャラン」/長編/連載中
- コメント : -
- トラックバック : -
-

-



