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[tog_p4_02]「おやつ」/タトパラ4

 パラレル、カズマ×周子、息抜きな小話、ささやかな日常の切り出し。
 設定というか状況的には、タトゥーが解け、カズマは家督を継いだ、カズマは今まで同様自邸に周子を置いているが。カズマがひとり、着々と劣情を募らせつつある今日この頃。
 本編とは関係ないので、別物として割り切って楽しめる方のみどうぞ。




「なんか機嫌悪いみたい?」
 あ、しまった、とカズマは思った、聡明な周子は機嫌の悪いときには近づかないという暗黙のルールを持っているらしく、それで正直助かったと思うときもあるにはあるが、周子がまたねと微笑んで当り障り無く去ってゆくのを見送って後悔したことのほうがはるかに多い。
 早速後悔しかけたのだが、幸い今日は周子がもう一歩踏み込んできた。ドアのところでほんの数秒逡巡しただけで周子はつかつかと室内に入ってくると、カズマの座っている執務デスクのすぐ側まで寄ってきた。
「そんな気分の時はなにか甘いものでも食べるといいよ、よーしエンギワルーにオーダーしてあげよう」
「彼は所用で夜まで戻らない。私が急な用事を言いつけてしまったんだ」
 カズマはいかにも不機嫌といった自分の声音にまたすぐに後悔した。
「じゃあ、私がいいもの作ってあげよっか」
「え?」
「大丈夫大丈夫、うちは父子家庭だったんだから。料理は大の得意だってば。カズマ様の好きなあれだってすっごく美味しく作れるんだから」
「好きなあれ?」
 カズマが首を傾げると、周子はにこにこと笑いかけてくる。
「カズマ様、前に美味しいって言ってたじゃない、好きでしょ?」
 カズマはしばらく考えたが何のことだか思いつかなかった。
「ふわー、つれないね、じゃああててよ。はーい問題でーす、そのおやつはカズマ様の大好きなものに似ています」
「周子」
「直球で来たな」
 だからおやつだってば、と周子がちょっと赤くなって照れた表情をしたのを見て、カズマはたちまち上機嫌になった。苛付いた気分なぞとうに消え失せている。
「もっと具体的に言ってよ」
「そう言われても……既にはっきりと具体的に言ったと思うが」
 機嫌の悪いままを装っていれば、おやつに周子とか言い出してもこの様子なら意外とあっさり身体を赦してくれるかもしれない、などと不埒なことがちらと頭に過ぎった、その矢先。
「カズマ様の好きなおっぱいに似ていまーす」
「おっ……」
「好きでしょ」
 カズマは返答に困って小さく咳払いをした。
「ではババロアかな」
 えっ? と周子は驚いたような声を上げた。
「私の胸、ババロアみたい?」
「ええ」
 周子が不本意そうな表情をして、自分のシャツの胸元から手を突っ込んだ。自分で自分の胸を触ってそうかなぁ、と首を捻る。
「違うよー……大体カズマ様ババロアなんていつ食べてんのよ? 私、カズマ様が甘いものを食べてるところなんてあのときしか見てないし、なんかすごく美味しそうに食べてたからきっとすっごくあれが好きなんだと思ったのに」
 だからあれってなんだ、と聞くと、あてなさいよ、と返される。
 周子の胸の柔らかな感触を思い出しながら、カズマはひとしきり首を捻って別の答えを口に出した、周子の肌の白さを思う。
「ブラマンジェ」
「ええー?」
 またも不本意そうに周子の眉根が寄る。またはずれか、とすかさずカズマは別の答えを口にする。
「イチゴムース」
「ちがう」
「いちごのショートケーキ」
「ちがう」
「いちご……」
「いちごばっかだな」
 んんー、とカズマが困ったように喉の奥を鳴らした。
「羽二重餅」
 なによそれ、そんな食べ物知らない、とたちまち周子の頬が膨れる。
「カズマ様はなんでそんなおやつの名前を知ってるの、いつそんなにたくさん甘いものを食べてるのよ、お家では全然食べないじゃない、他所で? 他所で食べてくるの? ふわー、なんだか浮気でもされた気分」
 浮気なんかするはずないじゃないか、と反論しようとした矢先、ぐっと手を掴まれて、周子のシャツの中に突っ込まれた。その素肌にじかに触れさせられて、思わずカズマは真顔で周子を見た。
「触ってどんな感じ?」
「どんなって……そりゃ……ふわふわーって感じで非常に柔らかい……」
 この降って湧いたような嬉しい状況をどうしたらよいものかとカズマは少々困惑した。目の前の周子の様子といえば、真顔で強気で少し機嫌を損ねていて……色気の欠片もない。性的な意味で誘ってなぞいないのがはっきりしていて、なんとも惜しかった。
「じゃあ、はい、当てて」
「マシュマロ?」
「もう!」
 なんでわっかんないの! もっとちゃんと触りなさいよ、と理不尽に怒られ、カズマはその嬉しさを噛み殺しながら周子の豊かで可憐な片房をしっとりと揉んだ。空いているほうの手でシャツのボタンをすべて外して前を肌蹴させると、わからないなぁなどと開き直って呟いてみせる。片手のひらに少し余るくらいの豊かな周子の胸は触っていて本当に心地が良い。
「ほわほわしていて柔らかいだろう、まるで何かの生き物みたいに」
「生きてるってば私!」
「は、いや……」
 だから生身の女じゃなくて人形が好きとか妙な陰口叩かれんのよ、と言われてカズマは苦笑しながらひとしきり周子の胸をやさしく揉み解した。
「だから、マシュマロだろう? 」
 そして胸の頂きをちょっと指の腹で擦ったら周子がいきなり跳ねた。
「ちょ、ちょっと待って!」
 そういう触り方はちょっと、と身体を引こうとする腰に手を回してぐっと抱き寄せる。バランスを崩した周子がいとも容易く膝の上に落ちてきて、カズマはどうにも男っぽい熱情に駆られた。
「問題を出した以上は正解するまで責任をとるべきだろう」
「はずれっ、はずれでもういい、おしまい」
 周子がみるみるうちに赤面して。
「プリンだってば!」
 あっさりと正解を吐いた。
「プリンねぇ」
 なるほどね、と思いながら、周子を膝の上に座らせるとカズマはその胸元を撫でさすって口づけた。周子が甘えるように小さく鼻を鳴らして、だめだってば、とまんざらでもない声色で制止するのがまた良くて。くすぐったいって、と肩を震わせる周子の仕種がたまらなく良くて。
「前に食べてたじゃん、すっごく美味しそうな顔して」
「そんなことがあったかな? ではおそらくそれはあなたと一緒だったからだろう。そもそもあまり甘いものは食べないとあなただって知っているはずだ」
 この際、なし崩しでも何でもいい、とにかくいただいてしまおう、とカズマはいつになく急いた欲情に任せ周子の太腿のその奥へと手を這わせようとしたのだが。
「父さんもプリンが好きなんだよね」
 唐突に周子に言われて、カズマはぴた、と手を止めた。
 まったくあの男は、死人のくせにこういうイイ雰囲気になったときにこそ確実に邪魔をしてくるから困ったものだ、と内心忌々しく思いながら小さく吐息を吐いた。
「父さんもプリンが大好きなくせに、問題を出すとずーっと考え込んでいるのよ」
 思わずカズマは目を剥いた。
「問題? まさかさっきの?」
 そして触らせるのか、と聞けば、別に親子なんだからヘンじゃないじゃない、と真顔でこともなげに返されて、カズマは後頭部を殴られた気分になった。
「毎回きれいさっぱり忘れるんだわ。思い出すのに一時間くらいかかるんだから変な人よね。まあ父さんのそんなところが好きなんだけど」
「一時間?」
「うん。それくらいずーっとやわやわ揉んで、考え込んでる」
「!!」
 それはどう考えてもおかしくないか? だがそう言ってしまえば……修三のことに関して、それがどんなに些細なことであっても悪口に聞こえてしまえば、たちまちに周子は機嫌を悪くする、三日は確実に口を利いてくれなくなるのを既にカズマは知っている。
「じゃ、プリン作ってくるから」
 楽しみにしててね、周子は明るくそう言ってカズマの膝の上から下りると、何事も無かったかのようにシャツのボタンを留め上げ、鼻歌を歌いながら部屋を出て行った。
「くそっ、修三め」
 無言のまま周子の胸の柔らかさを堪能している修三の悪びれぬ表情を思い浮かべ、あの男は絶対にわざとそうしているに違いないと思うとどうにも肚が立った。周子がああも恋情に疎いのも、そうかと思えば時々こちらが驚くほどの大胆な親愛の情動を示すのも、すべての原因はあの男なのだ、カズマは思わずデスクを蹴った。



[tog_p4_02]「おやつ」/タトパラ4
Created: 2006-06-07
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