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[tog]61:唐突にして強烈な

 にわかに外が騒がしくなった。馬が鼻を鳴らしぶるり馬体を震わす音、それから少し遅れて、どかどかと乱暴な、聞き慣れた足音が玄関のほうから響いてくる。
 それは玄関から真っ直ぐ奥へと消えてゆき、また再び玄関のほうへと戻ってきたようだった。
 腹が減った、いやそれよりも周子はどこだ、部屋にいないぞ、と出迎えた侍従長エンギワルーを問いただす大きな声がエントランスに響いた。
「あなたをお探しのようですね」
「寝た振りしてようかな、うるさそうだし」
 つくづく嫌そうに周子はそう言って、カズマのベッドにダイブする。
 やれやれ、と肩を竦めたカズマに、一緒に寝る? 既成事実っぽくていいかもよ? と周子は無邪気に笑った。
 ばふ、と枕に顔をうずめ、そこにカズマの匂いを知る。
 ふと、この男に抱かれれば、この身体がギャランを想う不穏な感覚は治まるだろうか、と思った。
 あの日、身体に刻まれたあの男の想いを、流してはくれぬだろうか、ギャランのことを想うとずきりと痛んだ、この馬鹿な子宮を手馴づけてはくれぬだろうか、と。
 ふと男としてのカズマに抱いてしまった好奇心、それを認識したその瞬間、周子は唐突にして強烈な羞恥を覚え、慌てて身体を起こすとベッドから飛び降りた。おかしな事を考えた頭を強く振って窓の方へと逃げてゆく。断然、夜風に当たるべきだ、そう思って。
 その手をぐっ、ととられた。
 返り見れば、ぞっとするほど冷たい表情のカズマがある。
「私をお望みか?」
 その冷たい表情に、周子は内心のひどい動揺を押し隠し、ほんっと喰えない人ね! と、カズマの腰のあたりを後からばしん、と叩いた。存外の周子の力に虚を衝かれたカズマが大きくよろけ、周子は慌ててその腕を取った。
 それは、ギャランではない、周子の未だ知らぬ男の、しっかりと筋肉のついた腕だった。
「大丈夫? このくらいでよろけるだなんて。ホントあんたはあのバカに夢中ね、帰ってきたらすっかり気もそぞろ」
 妬くわよ、と笑って周子は身体を離した。
 その笑顔に、カズマは唐突な熱いものを覚えた。
 それはついぞ感じたことのない、強烈な性欲だった。
 不意に背筋を熱く焼けた針で穿たれたような、意外な感覚だった。

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