コハリトりみっと
長編恋愛FT「タトゥー・オブ・ギャラン」がメインの小説・雑記サイト。
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その日の夜、あれから一度も顔を見せぬ修三を他所に、クレリック・リザートはいつもの調子で周子の作った夕食を喰らい、離れに寝床を陣取った。だがその内心は、全く落ち着かなかった。胸に湧くのは、かねてより狙っていた女を抱けるということへの熱烈な期待、というよりもむしろ、己が丹精こめて育て上げた無垢な娘が、心無い助平な男に抱かれることへの理不尽さと憤りだった。
きつめの酒をそのままきゅっと呷って、おれはどうしようもないほどに矛盾している、とクレリック・リザートはひとり口の端を下げた。
そして……。
―――来ちゃったよ、ホントに、こぉンの世間知らずめ!
闇の中に静かにあらわれた周子を見て、真っ先に心に浮かんだ一言がこれだった。
もう何年も狙っていた特上の獲物である、まだ若さの方が目立つ、成熟した女の色香には足りぬが、今まで見てきた女の中で最も美しいといってもいいだろう、本当は大喜びなはずなのだが、周子を見た途端、クレリック・リザートはどうにもこうにも、今宵抱かれに来たバカ正直なこの娘の脳天を、ごいんと一発殴りたい衝動に駆られた。
「おれも男だ、初志は貫くべきだ、抱いて当然、然るべきだ」
いったい何の言い訳なのか、もはや自分でもさっぱり不明である。
昼の一件以来、正直言ってどうにも、この目の前の周子が、血のつながった実の娘のような気がしてきてならない。あまりにスレていなさ過ぎて、眩しいくらいで、普段のその気の強さを思うと、こうして言いくるめられた様はもうどうしようもなく頼りなくて。父親気分で説教のひとつでもしてやりたくてたまらなくなってしまったのである。
―――こうもやすやすと男の舌先三寸に丸め込まれて……ああ、いかん、ラッシュ、お前はころっとまるっと言いくるめられてんだぞ、ちッくしょー、ラッシュはぜってーいつか男で痛い目見るぞ、それもこれもイビサの奴が、どえらく世間知らずに無菌栽培しやがったからだ、こうまで初心だとおれもさすがに二の足を踏むぞ!
実際、周子よりも若い娘を抱くことだってあるというのに、いざとなるとどうにもこの周子だけは特別だった。抗い難いほどに強烈な罪悪感が胸を苛むのである。
胸に暗雲の如く立ち込める罪悪感をぎゅむぎゅむと押さえ付け、ベッドの縁に腰掛けると、クレリック・リザートはぞんざいに顎をしゃくった。
「脱げよ」
「うん……」
「……は、いいざまだな」
周子が大人しく服を脱いだ。明かりを落とした暗闇にぼうっと浮き上がるそれは、均整のとれた、しなやかな肢体だった。
二つの丸い乳房と細い腰から続くまろやかで滑らかな曲線。
女の形だ。
そう、これは所詮ただの女の体だ、と改めて思うと、ようやく、獲物を前にしたようないい気分がした。
「おれに抱かれてまで、自分のことを知りたいんだな?」
「知りたい、父さんが何考えてるのか知りたい」
周子がそのすぐ隣に腰掛ける。ベッドの縁が少し沈んで、周子の肌の甘やかな香気が鼻についた。鼻孔の奥がぼうっと痺れるような女の匂いだった。いっぱしの女じゃねぇか、途端に得たその強烈な高揚感にクレリック・リザートは鳥肌が立つのすら覚えた。
その勢いで押し倒す。
が。
とさり、とベッドの上に仰向けに押し倒された周子の身体、そのあまりの抵抗の無さに、ぐう、とクレリック・リザートは唸って。
あまつさえ、もっと自分を大切にしろよ! などと、己の人生でこれまで一度たりとも吐いたことの無い言葉が口を突いて出てしまい……そんな己の言葉にすっかり気が萎えたクレリック・リザートは、身を起こすとばりばりと首筋を掻いた。
―――ったく、イビサのヤツがあまりに父親らしくないからだ、実の娘に惚れやがって
シーツの上で仰向けになったまま、周子がきょとんとこちらを見上げている。
どうにもいとおしい。女というものを軽く凌駕した、何か大切なものに思えてならぬ、男に蹂躙され揺すられて色っぽく喘ぐ姿なぞ……クレリック・リザートは、もはや、見たくないのだ。
周子が不思議そうに首を傾げ、それから少し恥らう様子で軽くシーツを手繰り寄せ身を隠した。それを黙って許す己を知り、おれも年をくった、とクレリック・リザートは痛烈に思った。
「あいつはミアムを抜ける」
「抜ける?」
「国からもベースからも抜けてお前と二人、暮らしたいと思っている」
「? でも二人暮しは今だってそうよ。私は父さんがいれば、それで幸せだよ、そりゃあ、周りの人間にはむかつくことが多いけど、父さんさえいてくれればそれでいい、関係ない」
ホントに無知だな、とクレリック・リザートは口の端を下げて周子を睨んだ。
「お前らタチバナの血にはミアムの他の連中とは決定的な違いがある、分かるか」
「魔力の強さが違う」
「その他にだ。タチバナの刻むタトゥーについて、聞いたことは?」
「タトゥー? タチバナだけが何か違うの?」
「ああ。決定的な違いがある、それは、名を刻んで竜が出るってことだ」
りゅう、と呟いて周子は目を丸くした。
それから、聞いていない、と真顔で首を横に振る。
―――やはりイビサの奴、話していないのか
「ミアムの召喚の種には、まれに特殊な血が出る。それがお前らのタチバナの血だ、ひとたび現れれば百代続くといい、その血系の者のタトゥーには竜の盟約が宿る、この世のどんな望みをも叶えるというドランクドラゴン召喚の盟約だ、タトゥーを刻めば竜が出るお前らの血系は、百代にわたって百匹の竜を入れておく、いわば入れ物だ」
周子の表情はといえば、神妙な、だが話の意味がよく理解出来ないといった感じできょとんとしている。その様子は、どこかウサギを髣髴させて……えらく可愛い、どうしようもなく、可愛い。理屈抜きで可愛い。
はーあ、とクレリック・リザートは深く息をついて。なんでおれがこんなこと説明するんだろうねぇ、それこそ同じ血を持つ父親の役目の筈なんだがな、とひとしきりぶつぶつとぼやいた。父親じみた、だが父親とはあきらかに格が違う、特段慕われもせず手間ばかりが掛かる、つまりはどうしようもなく損な役回りをイビサに押し付けられたような気がしてならぬ。
未練は、ある、もちろんだ。
はーあ、と再び深く息を吐き、周子を見たものの、髪の地肌がじりじりと痛むような苛立ちを感じて。
―――くそぅ、お前、おれが手を出さねぇと察して誘ってんだろが!
周子はベッドに横になったまま、枕に肘を立ててこちらを見ている。
分かってやっているのかそうでないのか、無自覚めいたその仕種にこそ既に女の性がある、いっそ憎らしい。これだから処女ってのは始末が悪い。
「イビサは九十九代目、そして、その娘のお前は、そう、百代目、だ。お前らの血が代々、タトゥーを刻むたびに出してきた竜、呪竜と呼ばれるこの竜を、ベースは長らく集めている、百匹まであと二匹、残るはイビサとお前の分だ。イビサの呪竜を抜きに、いまベースは躍起になっている」
「父さんの?」
「お前は馬鹿だから、いい男が出来たらさくっと名を刻むだろうとベースは甘く見てる」
「ははっ。確かにいい男がいたらとっくに刻んでるわよ、でもいないじゃない、父さんよりいい男なんて全然、いない。きっと一生現れない、最近よくそう思う、無駄よ」
問題はイビサだ、とクレリック・リザートはしれっと返した周子を窘め、厳しい声色を出した。
「イビサは、自分の呪竜さえ抜かれなければ、百匹揃うことはありえぬ、と。たとえお前が他所に惚れた男が出来て名を刻んでも、イビサは、己の竜が欠ければ、ベースにとってのお前の価値は無くなる、と踏んでいる、あいつは絶対に自分の呪竜だけは抜かせぬ気だ」
ふうん、と周子は鼻で軽く笑った。
「呪竜を百匹すべて集めること、それがベースの目的ってわけね、いいじゃない、そんなわけのわからん竜なんかさっさとくれてや……」
「イビサは必死だぞ、お前、イビサが好んで名を刻まぬとでも思っているのか、あいつにだって刻みたい名ぐらいあるだろうよ」
がばっ! と周子が身を起こした。ぽろりと形良い双房が露わになる。
「えっ! あるの? 父さん、好きな女がいるの!?」
「…………………」
クレリック・リザートはつくづく阿呆らしそうに半目を伏せた。
「その石、絶対ベースには渡すなよ」
うんざりしたような長い沈黙の後、そう言って寄越したクレリック・リザートに、周子は己の指にはめた黒い石に視線を落とした。
「タチバナの血以外には呪いの石だって。普通の人には抜けないんだって。渡すも何も、私か父さんかが抜かない限り、他人の手に渡るわけが無いよ」
バカスカ魔力を吸って、私にとっても呪いにしか思えないんだけど、と周子は呟いて。
「父さんは、私の強い魔力を抑制するのにちょうどいいって」
「……ああ、そいつは魔力を吸うって曰くつきの魔石だからな」
魔力を吸われまくってそれでもまだぴんぴんしてるお前のポテンシャルの方が、周囲には恐ろしいらしいぞ、とクギを刺すクレリック・リザートの声は冷えている。
「…………」
「……お前達の魔力はそれほどミアムの他の連中の常識を凌駕している。なんだ、ようやく外からの目線に気づいたか? お前達はよほど強烈な存在だぞ」
押し黙った周子にクレリック・リザートはそう畳み掛けて。
「しかもそいつは呪いの指輪じゃねぇ、ったく、イビサも適当なこと言いやがって。代々のタチバナが体内で魔力を込め蓄積させてきた石だ、価値ある石だ、文字通り魔力の結晶てやつだ」
そして、クレリック・リザートは真正面から周子を見据え、明確に発言した。
「その石は、呪竜百匹とタチバナの百代目の命を引き換えに効力を発する」
数拍遅れてから肩を強張らせた周子に、そうだ、お前は百匹の竜が揃ったら殺されることになってんだよ、と念押しして。
「タチバナの血系は呪竜の入った当たりクジ、大切な授かり物さ。特に百代目のお前は呪竜を抜くためだけじゃない、石の力を使うための生贄でもある、竜も体も、両方が大事な、大事な大事な娘だ。過去にも特殊な血系が世に出たことはあるにはあるが、名を刻む前に死んだりしてな、百代に至る前に、呪竜が抜けぬままに血系が絶えてしまっていた。呪竜が百匹揃う可能性があるのは、お前らの系タチバナ、今回が初めてだ。百年、じゃあねぇ、百代、だぞ、気の長い話だ、ベースはそんだけしつこく呪竜に拘泥している、ベースの執着はハンパじゃねぇ、ベースがとりわけお前に甘いのはお前がその貴重な百代目だからだ」
イビサの考えが分かったか、と片眉を顰めてみせる。
「”修三”はお前が死ぬ破目になるのが気に食わんのさ。あと二匹、と膨れに膨れ上がったベースの期待をぶち壊し、綿々と続いてきたベースによる一族の庇護やら掟やらなんやらを全部一切合財反故にしようとしてるってわけさ」
周子がクレリック・リザートの腕を強く掴んだ。
「修三、って!」
「おれはイビサの名を知ってる」
クレリック・リザートは些かも動じずに周子にそう返し、ニッ、と笑みを見せた。
「知ってて使わないの!? タトゥーを刻めば、父さんに命令してそれこそ愛人でも何でも、思いのままに操れるのに?」
ばか、気位の高いあの男が、たかが腕の傷ぐらいで大人しくおれのものになると思うか、とクレリック・リザートは渋い表情をした。
「あいつはそんなに安い男じゃないぞ」
そう言った瞬間、彼の瞳の端になんともいえぬ甘やかさが滲んだ。
たかが腕の傷、タトゥーのことをそんな風にぞんざいに言い捨てることの出来る男がいるとは思わなかった。まして、修三のそれを一番欲しがっていたのはこの男でないのか? 周子は頭の中が白くなったような感じで呆然とクレリック・リザートを見た。
「と、父さんがあんたに教えたの……?」
周子の声が震えたが、その問いに返ってきたのは否定だった。
首を横に振ったクレリック・リザートは周子を見る眼差しに力を込めた。真実を打ち明ける威圧感、そんなものを強く感じさせる説得力の伴った眼差しで周子の黒瞳を捉える。
「その昔、ベースがおれに依頼したのさ、イビサの呪竜を抜け、とね。ベースの有する最高機密、言い換えればこの世でもっとも貴重にして不可侵の、ミアムの絶対ルール、タチバナの先代が実子に名づけたその名を記した、開封厳禁の書類。ベースはそいつをおれに寄越した、おれがイビサの名を知っている理由はそれだ」
「うそ!」
「ベースはそんなことしない? ああそりゃそうだろう、ベースの存在意義がなくなるからな。ベースは名を知り得ない。名を記した書類を開けるのは最大の禁忌だ。しかし、ベースの腹黒さは、お前が良く知っていると思うがな?」
イビサがいつまでたっても名を刻む気配がないのに相当やきもきしたのだろうよ、とさらりと言ってのけたクレリック・リザートのその表情は、海千山千の傭兵の、酸いも甘いも噛み分けた狡猾にして堂々たるものだった。
「自分達でやりゃいいのにさすがにその度胸が無かった、下手に抜けば、逆上したイビサに殺される、たとえイビサがやらなくてもお前が絶対やる。やるだろ? ああ。それに、名を保護管理することはベースの最大の存在理由だ、開封したことが公になればベースは自滅だ」
クレリック・リザートはふん、と鼻を鳴らした。
「おれは傭兵だ、金を積まれりゃ何でもやる。召喚の種のタトゥーの主になるなんざ、面白いと思ったね。それも、よりによってミアムで最強を誇る男を、ときたもんだ、そいつを従えてみよとは、面白い。命の危険よりも好奇心が勝った、ベースも、おれほどに命知らずの男なら、刻むくらいはやらかすだろう、と踏んだんだろうが」
だがな、と言ってクレリック・リザートはふっと目を細めて笑った。
「美しかったんだ」
途端ぎょっとした表情になった周子にまた笑って。
「おれは、ひと目イビサを見て、もう、あんなに美しい男はいないと思ったね。目の合ったその瞬間、何物にも屈しない魂の気高さを見た。下りる事を許さぬ賭け、とでも言おうか、超然とした雰囲気ながら虎視眈々と何かの機を狙っている、その企みを湛えた眼差しのなんと艶めいて美しかったことか。夢や理想、それが何かは分からないが、ぞっとするほど得体の知れぬ何か、を肚に抱えている男だった、やらかす男ってのはあんな華麗なオーラをしてるもんだ、ベースがその存在を恐れるのも当然と思えた。たくらみ……まあ、それは初対面での印象で、それが果たして何なのか、おれは後で知って首でも括りたい気分になったんだが……イビサの名は、ベースの人間でさえ知らぬのだから、知ってるのはおれだけだ」
クレリック・リザートはそう言って、ちら、と周子を睨んだ。
「……と思ったが、なんだ、ラッシュも知っているのか?」
―――私の名は、修三、という。
二人住まいの家である。結界が張ってあるので来客があれば良かれ悪しかれすぐに分かる。明らかに周りには誰もいないはずなのに、修三は細心の注意を払うかのように周子の耳元でそっとそっと小さく囁いた。
―――あれは、いったいいつの頃だったか……
そう明かすと、ああなるほどね、とクレリック・リザートは途端に白けた表情をした。
「それって、愛の告白だな? あいつはお前に名を刻まれたいと思ったんだろうよ、だがお前は全然気づかなかったってわけだ、ったく、どんな子供の時分にだよ」
そんなに早くから熱上げてやがったのか? と苦笑する。
「一番手っ取り早いのは、呪竜を抜かれぬうちにイビサがさっさと自分の命を絶つことなんだがな……そうすりゃァ九十九代目の呪竜は欠ける。百匹揃わないとなれば百代目たるお前の存在にも価値が無くなる、お前は平和な人生を送れるって寸法だろうが……イビサは……どうにもお前を残しては先に死ぬ気がしないんだろうよ」
あんな無表情で、あんな超然としていて、だがその実、執拗な情念を肚に抱えた欲深な男だよな、とクレリック・リザートは苦笑いした。あんのどえらい切れ者が、こんな小娘にマジで現を抜かしやがって、それ以外にこだわりが無いって所もまたすごいんだが、と一層苦笑する。
「あいにく開封済みでおれは中を見てしまった後だったが、おれはイビサの前でファイルに火を付け燃やした、イビサはそれを見ただけですべてを悟ったのだろう、おれには目もくれず、黙って踵を返しやがった、おれの見せた誠意に一言もなく、だ。おれがイビサに追いついたときには既にベースは炎上していた、イビサがやったんだ」
覚えてないか、ベースは一度爆発してるぞ、とクレリック・リザートは言った。
「お前の名を記したファイルは、イビサがベースから取り上げて燃やした。お前の名は、もはや、お前自身か、名付け親のイビサしか知らん、イビサめ、そんなに好きならさくっと呼んで、とっとと自分の物にしちまえばいいのにな」
あー、やだやだ、禁欲的だねぇ、とクレリック・リザートは首を振る。
「クル、私と父さん、血がつながってるのよね?」
「知るか! お前らのことなぞ! ンなこと、おれに聞くな! お前らの血ほど不可解なものはねぇ!」
カッ、と吼え……たはいいものの、傷ついたような周子の表情を見て、やれやれ、と息を吐く。困惑した視線で周子を撫でて。
「……んまあとにかく、イビサがそう言ってるんだからそうなんだろ? お前が実の娘でなけりゃア、イビサはとっくに手を出しているだろうよ、あれはああ見えて、かなり男っぽい所のある男だぞ、ほんっとに、ヤってないのか? お間抜けなお前の事だ、寝てる間にさんざんヤられてンのに気付いてないとか……へぶッ!」
無礼な物言いのクレリック・リザートの顔面に拳をめり込ませ、周子は真面目に考え込んだが、どうにも思い当たる節は無かった。
そもそも、自分は修三を相手にそんな情を抱いたことすら、無いのである。
それこそ情が無い、と日頃皆に罵られている所以なのだろうか、相当に自分は人の情というやつに鈍いのであろうか。そんなに他人の気持ちに鈍いのか。
そ、そりゃ父さんのことは大好きだけれど、と周子は呟いてクレリック・リザートを見上げた。
「血が、つながってて、そんな風に相手を見ることがあるの? そ、そんなのって、それでもいいの? アリなの? れ、恋愛対象とか」
「古今東西なきにしもあらず、ってところだな」
たいていはバッドエンドに終わるがな、と続けそうになったその言葉をクレリック・リザートは飲み込んだ。
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きつめの酒をそのままきゅっと呷って、おれはどうしようもないほどに矛盾している、とクレリック・リザートはひとり口の端を下げた。
そして……。
―――来ちゃったよ、ホントに、こぉンの世間知らずめ!
闇の中に静かにあらわれた周子を見て、真っ先に心に浮かんだ一言がこれだった。
もう何年も狙っていた特上の獲物である、まだ若さの方が目立つ、成熟した女の色香には足りぬが、今まで見てきた女の中で最も美しいといってもいいだろう、本当は大喜びなはずなのだが、周子を見た途端、クレリック・リザートはどうにもこうにも、今宵抱かれに来たバカ正直なこの娘の脳天を、ごいんと一発殴りたい衝動に駆られた。
「おれも男だ、初志は貫くべきだ、抱いて当然、然るべきだ」
いったい何の言い訳なのか、もはや自分でもさっぱり不明である。
昼の一件以来、正直言ってどうにも、この目の前の周子が、血のつながった実の娘のような気がしてきてならない。あまりにスレていなさ過ぎて、眩しいくらいで、普段のその気の強さを思うと、こうして言いくるめられた様はもうどうしようもなく頼りなくて。父親気分で説教のひとつでもしてやりたくてたまらなくなってしまったのである。
―――こうもやすやすと男の舌先三寸に丸め込まれて……ああ、いかん、ラッシュ、お前はころっとまるっと言いくるめられてんだぞ、ちッくしょー、ラッシュはぜってーいつか男で痛い目見るぞ、それもこれもイビサの奴が、どえらく世間知らずに無菌栽培しやがったからだ、こうまで初心だとおれもさすがに二の足を踏むぞ!
実際、周子よりも若い娘を抱くことだってあるというのに、いざとなるとどうにもこの周子だけは特別だった。抗い難いほどに強烈な罪悪感が胸を苛むのである。
胸に暗雲の如く立ち込める罪悪感をぎゅむぎゅむと押さえ付け、ベッドの縁に腰掛けると、クレリック・リザートはぞんざいに顎をしゃくった。
「脱げよ」
「うん……」
「……は、いいざまだな」
周子が大人しく服を脱いだ。明かりを落とした暗闇にぼうっと浮き上がるそれは、均整のとれた、しなやかな肢体だった。
二つの丸い乳房と細い腰から続くまろやかで滑らかな曲線。
女の形だ。
そう、これは所詮ただの女の体だ、と改めて思うと、ようやく、獲物を前にしたようないい気分がした。
「おれに抱かれてまで、自分のことを知りたいんだな?」
「知りたい、父さんが何考えてるのか知りたい」
周子がそのすぐ隣に腰掛ける。ベッドの縁が少し沈んで、周子の肌の甘やかな香気が鼻についた。鼻孔の奥がぼうっと痺れるような女の匂いだった。いっぱしの女じゃねぇか、途端に得たその強烈な高揚感にクレリック・リザートは鳥肌が立つのすら覚えた。
その勢いで押し倒す。
が。
とさり、とベッドの上に仰向けに押し倒された周子の身体、そのあまりの抵抗の無さに、ぐう、とクレリック・リザートは唸って。
あまつさえ、もっと自分を大切にしろよ! などと、己の人生でこれまで一度たりとも吐いたことの無い言葉が口を突いて出てしまい……そんな己の言葉にすっかり気が萎えたクレリック・リザートは、身を起こすとばりばりと首筋を掻いた。
―――ったく、イビサのヤツがあまりに父親らしくないからだ、実の娘に惚れやがって
シーツの上で仰向けになったまま、周子がきょとんとこちらを見上げている。
どうにもいとおしい。女というものを軽く凌駕した、何か大切なものに思えてならぬ、男に蹂躙され揺すられて色っぽく喘ぐ姿なぞ……クレリック・リザートは、もはや、見たくないのだ。
周子が不思議そうに首を傾げ、それから少し恥らう様子で軽くシーツを手繰り寄せ身を隠した。それを黙って許す己を知り、おれも年をくった、とクレリック・リザートは痛烈に思った。
「あいつはミアムを抜ける」
「抜ける?」
「国からもベースからも抜けてお前と二人、暮らしたいと思っている」
「? でも二人暮しは今だってそうよ。私は父さんがいれば、それで幸せだよ、そりゃあ、周りの人間にはむかつくことが多いけど、父さんさえいてくれればそれでいい、関係ない」
ホントに無知だな、とクレリック・リザートは口の端を下げて周子を睨んだ。
「お前らタチバナの血にはミアムの他の連中とは決定的な違いがある、分かるか」
「魔力の強さが違う」
「その他にだ。タチバナの刻むタトゥーについて、聞いたことは?」
「タトゥー? タチバナだけが何か違うの?」
「ああ。決定的な違いがある、それは、名を刻んで竜が出るってことだ」
りゅう、と呟いて周子は目を丸くした。
それから、聞いていない、と真顔で首を横に振る。
―――やはりイビサの奴、話していないのか
「ミアムの召喚の種には、まれに特殊な血が出る。それがお前らのタチバナの血だ、ひとたび現れれば百代続くといい、その血系の者のタトゥーには竜の盟約が宿る、この世のどんな望みをも叶えるというドランクドラゴン召喚の盟約だ、タトゥーを刻めば竜が出るお前らの血系は、百代にわたって百匹の竜を入れておく、いわば入れ物だ」
周子の表情はといえば、神妙な、だが話の意味がよく理解出来ないといった感じできょとんとしている。その様子は、どこかウサギを髣髴させて……えらく可愛い、どうしようもなく、可愛い。理屈抜きで可愛い。
はーあ、とクレリック・リザートは深く息をついて。なんでおれがこんなこと説明するんだろうねぇ、それこそ同じ血を持つ父親の役目の筈なんだがな、とひとしきりぶつぶつとぼやいた。父親じみた、だが父親とはあきらかに格が違う、特段慕われもせず手間ばかりが掛かる、つまりはどうしようもなく損な役回りをイビサに押し付けられたような気がしてならぬ。
未練は、ある、もちろんだ。
はーあ、と再び深く息を吐き、周子を見たものの、髪の地肌がじりじりと痛むような苛立ちを感じて。
―――くそぅ、お前、おれが手を出さねぇと察して誘ってんだろが!
周子はベッドに横になったまま、枕に肘を立ててこちらを見ている。
分かってやっているのかそうでないのか、無自覚めいたその仕種にこそ既に女の性がある、いっそ憎らしい。これだから処女ってのは始末が悪い。
「イビサは九十九代目、そして、その娘のお前は、そう、百代目、だ。お前らの血が代々、タトゥーを刻むたびに出してきた竜、呪竜と呼ばれるこの竜を、ベースは長らく集めている、百匹まであと二匹、残るはイビサとお前の分だ。イビサの呪竜を抜きに、いまベースは躍起になっている」
「父さんの?」
「お前は馬鹿だから、いい男が出来たらさくっと名を刻むだろうとベースは甘く見てる」
「ははっ。確かにいい男がいたらとっくに刻んでるわよ、でもいないじゃない、父さんよりいい男なんて全然、いない。きっと一生現れない、最近よくそう思う、無駄よ」
問題はイビサだ、とクレリック・リザートはしれっと返した周子を窘め、厳しい声色を出した。
「イビサは、自分の呪竜さえ抜かれなければ、百匹揃うことはありえぬ、と。たとえお前が他所に惚れた男が出来て名を刻んでも、イビサは、己の竜が欠ければ、ベースにとってのお前の価値は無くなる、と踏んでいる、あいつは絶対に自分の呪竜だけは抜かせぬ気だ」
ふうん、と周子は鼻で軽く笑った。
「呪竜を百匹すべて集めること、それがベースの目的ってわけね、いいじゃない、そんなわけのわからん竜なんかさっさとくれてや……」
「イビサは必死だぞ、お前、イビサが好んで名を刻まぬとでも思っているのか、あいつにだって刻みたい名ぐらいあるだろうよ」
がばっ! と周子が身を起こした。ぽろりと形良い双房が露わになる。
「えっ! あるの? 父さん、好きな女がいるの!?」
「…………………」
クレリック・リザートはつくづく阿呆らしそうに半目を伏せた。
「その石、絶対ベースには渡すなよ」
うんざりしたような長い沈黙の後、そう言って寄越したクレリック・リザートに、周子は己の指にはめた黒い石に視線を落とした。
「タチバナの血以外には呪いの石だって。普通の人には抜けないんだって。渡すも何も、私か父さんかが抜かない限り、他人の手に渡るわけが無いよ」
バカスカ魔力を吸って、私にとっても呪いにしか思えないんだけど、と周子は呟いて。
「父さんは、私の強い魔力を抑制するのにちょうどいいって」
「……ああ、そいつは魔力を吸うって曰くつきの魔石だからな」
魔力を吸われまくってそれでもまだぴんぴんしてるお前のポテンシャルの方が、周囲には恐ろしいらしいぞ、とクギを刺すクレリック・リザートの声は冷えている。
「…………」
「……お前達の魔力はそれほどミアムの他の連中の常識を凌駕している。なんだ、ようやく外からの目線に気づいたか? お前達はよほど強烈な存在だぞ」
押し黙った周子にクレリック・リザートはそう畳み掛けて。
「しかもそいつは呪いの指輪じゃねぇ、ったく、イビサも適当なこと言いやがって。代々のタチバナが体内で魔力を込め蓄積させてきた石だ、価値ある石だ、文字通り魔力の結晶てやつだ」
そして、クレリック・リザートは真正面から周子を見据え、明確に発言した。
「その石は、呪竜百匹とタチバナの百代目の命を引き換えに効力を発する」
数拍遅れてから肩を強張らせた周子に、そうだ、お前は百匹の竜が揃ったら殺されることになってんだよ、と念押しして。
「タチバナの血系は呪竜の入った当たりクジ、大切な授かり物さ。特に百代目のお前は呪竜を抜くためだけじゃない、石の力を使うための生贄でもある、竜も体も、両方が大事な、大事な大事な娘だ。過去にも特殊な血系が世に出たことはあるにはあるが、名を刻む前に死んだりしてな、百代に至る前に、呪竜が抜けぬままに血系が絶えてしまっていた。呪竜が百匹揃う可能性があるのは、お前らの系タチバナ、今回が初めてだ。百年、じゃあねぇ、百代、だぞ、気の長い話だ、ベースはそんだけしつこく呪竜に拘泥している、ベースの執着はハンパじゃねぇ、ベースがとりわけお前に甘いのはお前がその貴重な百代目だからだ」
イビサの考えが分かったか、と片眉を顰めてみせる。
「”修三”はお前が死ぬ破目になるのが気に食わんのさ。あと二匹、と膨れに膨れ上がったベースの期待をぶち壊し、綿々と続いてきたベースによる一族の庇護やら掟やらなんやらを全部一切合財反故にしようとしてるってわけさ」
周子がクレリック・リザートの腕を強く掴んだ。
「修三、って!」
「おれはイビサの名を知ってる」
クレリック・リザートは些かも動じずに周子にそう返し、ニッ、と笑みを見せた。
「知ってて使わないの!? タトゥーを刻めば、父さんに命令してそれこそ愛人でも何でも、思いのままに操れるのに?」
ばか、気位の高いあの男が、たかが腕の傷ぐらいで大人しくおれのものになると思うか、とクレリック・リザートは渋い表情をした。
「あいつはそんなに安い男じゃないぞ」
そう言った瞬間、彼の瞳の端になんともいえぬ甘やかさが滲んだ。
たかが腕の傷、タトゥーのことをそんな風にぞんざいに言い捨てることの出来る男がいるとは思わなかった。まして、修三のそれを一番欲しがっていたのはこの男でないのか? 周子は頭の中が白くなったような感じで呆然とクレリック・リザートを見た。
「と、父さんがあんたに教えたの……?」
周子の声が震えたが、その問いに返ってきたのは否定だった。
首を横に振ったクレリック・リザートは周子を見る眼差しに力を込めた。真実を打ち明ける威圧感、そんなものを強く感じさせる説得力の伴った眼差しで周子の黒瞳を捉える。
「その昔、ベースがおれに依頼したのさ、イビサの呪竜を抜け、とね。ベースの有する最高機密、言い換えればこの世でもっとも貴重にして不可侵の、ミアムの絶対ルール、タチバナの先代が実子に名づけたその名を記した、開封厳禁の書類。ベースはそいつをおれに寄越した、おれがイビサの名を知っている理由はそれだ」
「うそ!」
「ベースはそんなことしない? ああそりゃそうだろう、ベースの存在意義がなくなるからな。ベースは名を知り得ない。名を記した書類を開けるのは最大の禁忌だ。しかし、ベースの腹黒さは、お前が良く知っていると思うがな?」
イビサがいつまでたっても名を刻む気配がないのに相当やきもきしたのだろうよ、とさらりと言ってのけたクレリック・リザートのその表情は、海千山千の傭兵の、酸いも甘いも噛み分けた狡猾にして堂々たるものだった。
「自分達でやりゃいいのにさすがにその度胸が無かった、下手に抜けば、逆上したイビサに殺される、たとえイビサがやらなくてもお前が絶対やる。やるだろ? ああ。それに、名を保護管理することはベースの最大の存在理由だ、開封したことが公になればベースは自滅だ」
クレリック・リザートはふん、と鼻を鳴らした。
「おれは傭兵だ、金を積まれりゃ何でもやる。召喚の種のタトゥーの主になるなんざ、面白いと思ったね。それも、よりによってミアムで最強を誇る男を、ときたもんだ、そいつを従えてみよとは、面白い。命の危険よりも好奇心が勝った、ベースも、おれほどに命知らずの男なら、刻むくらいはやらかすだろう、と踏んだんだろうが」
だがな、と言ってクレリック・リザートはふっと目を細めて笑った。
「美しかったんだ」
途端ぎょっとした表情になった周子にまた笑って。
「おれは、ひと目イビサを見て、もう、あんなに美しい男はいないと思ったね。目の合ったその瞬間、何物にも屈しない魂の気高さを見た。下りる事を許さぬ賭け、とでも言おうか、超然とした雰囲気ながら虎視眈々と何かの機を狙っている、その企みを湛えた眼差しのなんと艶めいて美しかったことか。夢や理想、それが何かは分からないが、ぞっとするほど得体の知れぬ何か、を肚に抱えている男だった、やらかす男ってのはあんな華麗なオーラをしてるもんだ、ベースがその存在を恐れるのも当然と思えた。たくらみ……まあ、それは初対面での印象で、それが果たして何なのか、おれは後で知って首でも括りたい気分になったんだが……イビサの名は、ベースの人間でさえ知らぬのだから、知ってるのはおれだけだ」
クレリック・リザートはそう言って、ちら、と周子を睨んだ。
「……と思ったが、なんだ、ラッシュも知っているのか?」
―――私の名は、修三、という。
二人住まいの家である。結界が張ってあるので来客があれば良かれ悪しかれすぐに分かる。明らかに周りには誰もいないはずなのに、修三は細心の注意を払うかのように周子の耳元でそっとそっと小さく囁いた。
―――あれは、いったいいつの頃だったか……
そう明かすと、ああなるほどね、とクレリック・リザートは途端に白けた表情をした。
「それって、愛の告白だな? あいつはお前に名を刻まれたいと思ったんだろうよ、だがお前は全然気づかなかったってわけだ、ったく、どんな子供の時分にだよ」
そんなに早くから熱上げてやがったのか? と苦笑する。
「一番手っ取り早いのは、呪竜を抜かれぬうちにイビサがさっさと自分の命を絶つことなんだがな……そうすりゃァ九十九代目の呪竜は欠ける。百匹揃わないとなれば百代目たるお前の存在にも価値が無くなる、お前は平和な人生を送れるって寸法だろうが……イビサは……どうにもお前を残しては先に死ぬ気がしないんだろうよ」
あんな無表情で、あんな超然としていて、だがその実、執拗な情念を肚に抱えた欲深な男だよな、とクレリック・リザートは苦笑いした。あんのどえらい切れ者が、こんな小娘にマジで現を抜かしやがって、それ以外にこだわりが無いって所もまたすごいんだが、と一層苦笑する。
「あいにく開封済みでおれは中を見てしまった後だったが、おれはイビサの前でファイルに火を付け燃やした、イビサはそれを見ただけですべてを悟ったのだろう、おれには目もくれず、黙って踵を返しやがった、おれの見せた誠意に一言もなく、だ。おれがイビサに追いついたときには既にベースは炎上していた、イビサがやったんだ」
覚えてないか、ベースは一度爆発してるぞ、とクレリック・リザートは言った。
「お前の名を記したファイルは、イビサがベースから取り上げて燃やした。お前の名は、もはや、お前自身か、名付け親のイビサしか知らん、イビサめ、そんなに好きならさくっと呼んで、とっとと自分の物にしちまえばいいのにな」
あー、やだやだ、禁欲的だねぇ、とクレリック・リザートは首を振る。
「クル、私と父さん、血がつながってるのよね?」
「知るか! お前らのことなぞ! ンなこと、おれに聞くな! お前らの血ほど不可解なものはねぇ!」
カッ、と吼え……たはいいものの、傷ついたような周子の表情を見て、やれやれ、と息を吐く。困惑した視線で周子を撫でて。
「……んまあとにかく、イビサがそう言ってるんだからそうなんだろ? お前が実の娘でなけりゃア、イビサはとっくに手を出しているだろうよ、あれはああ見えて、かなり男っぽい所のある男だぞ、ほんっとに、ヤってないのか? お間抜けなお前の事だ、寝てる間にさんざんヤられてンのに気付いてないとか……へぶッ!」
無礼な物言いのクレリック・リザートの顔面に拳をめり込ませ、周子は真面目に考え込んだが、どうにも思い当たる節は無かった。
そもそも、自分は修三を相手にそんな情を抱いたことすら、無いのである。
それこそ情が無い、と日頃皆に罵られている所以なのだろうか、相当に自分は人の情というやつに鈍いのであろうか。そんなに他人の気持ちに鈍いのか。
そ、そりゃ父さんのことは大好きだけれど、と周子は呟いてクレリック・リザートを見上げた。
「血が、つながってて、そんな風に相手を見ることがあるの? そ、そんなのって、それでもいいの? アリなの? れ、恋愛対象とか」
「古今東西なきにしもあらず、ってところだな」
たいていはバッドエンドに終わるがな、と続けそうになったその言葉をクレリック・リザートは飲み込んだ。
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- 2006-12-10 06:03
- カテゴリ : 「タトゥー・オブ・ギャラン」/長編/連載中
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